「意外高」があるかもしれない2つの理由

 日経平均・TOPIXの両方でもみ合いだったわけですが、こうした値動きによって時間調整が進んだと見るならば、株価がそろそろ方向感を持った動きになってもおかしくはありません。図1と図2の日足チャートを見る限りでは下方向がやや優勢ではあるものの、もしかすると「意外高」があるかもしれません。

 その理由の1つが需給面のアク抜けです。JPX(日本取引所グループ)が毎週公表している『投資部門別売買動向』を見ると、今年の1月第2週からずっと売り越しを続けている投資主体が存在します。それは何かというと信託銀行です。

 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などは信託銀行を通じて株を売買しているため、GPIFの動きが信託銀行の買い越し・売り越しに表れていると考えることができます(かなり大ざっぱな見方ではありますが)。GPIFは株や債券などの資産組み入れ比率の上限が決められており、株高の局面が続くと、保有している株の資産価値が上昇して組み入れ比率の上限を超えてしまうため、そのリバランスを目的に株を売却する場面が増えます。

 信託銀行は約3カ月にわたってずっと売り越しを続けていることもあり、GPIFのリバランスが一巡して売り圧力が弱まれば需給が軽くなり、あっさり日経平均が3万円台を回復する展開があるかもしれません。

 続いて、2つめの理由は米国株との出遅れ修正期待です。先週の米国株市場もNYダウ平均株価やS&P500が連日で史上最高値を更新するなど強い動きを見せましたが、前回のレポートでも指摘した通り、日本株はこうした米国株の強さについて行けない場面が増えていて、先週の日本株も同様の展開でした。

 今後、企業決算を手掛かりに日本株への見直し機運が高まれば、米国株にキャッチアップしていく展開もあり得そうです。ただ、今週の企業決算発表スケジュールをチェックすると、日本では日本電産やオービック、ディスコ、エムスリーなどが予定されている一方、米国ではIBMやネットフリックス、P&G、J&J、インテルなどが予定されており、市場の注目度は断然米国の方が高いため、先週と同様に日本株が上げ下げを繰り返す展開になるシナリオも残されています。

 また、「米国株の株高について行けないが、株安にはきちんとお付き合いしてしまう」可能性もあるため、米国株の失速には注意です。