日経平均は横ばい、TOPIXは弱含みの展開が続く

 先週末4月16日(金)の日経平均株価は2万9,683円で取引を終え、前週末終値(2万9,768円)比では85円安となりました。前週も86円安で取引を終えており、週足ベースで2週連続の下落となったものの、その割に下げ幅はあまり大きくはなく、相場自体は堅調さを保ったと言えます。

■(図1)日経平均(日足)とMACD(2021年4月16日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、週を通じて横ばいの動きとなりました。

 株価は25日移動平均線をサポートにして、5日移動平均線を意識した展開が続いたほか、ローソク足の並びも陰線と陽線が交互に現れる「鯨幕相場」となっています。

 下段のMACDが週末16日(金)に微妙にシグナルを下回ってしまったのが気掛かりですが、日米で企業の決算が増える中でまだ相場に新たな方向感が生まれてはおらず、東証1部の売買代金も低調だったころから引き続き決算動向をにらみつつ、様子見の推移だったと言えます。

 続いて、TOPIX(東証株価指数)の動きもチェックします。

■(図2)TOPIX(日足)とMACD(2021年4月16日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週末16日(金)のTOPIX終値は1,960pでした。前週末終値が1,959pだったので、ほぼ横ばいながらも一応は上昇しています。

 5日移動平均線を意識した展開は日経平均と同じですが、25日移動平均線が上値を抑える抵抗になっていたほか、下段のMACDも下降傾向が続いており、前週からの弱含みの展開が継続していたと言えます。

「意外高」があるかもしれない2つの理由

 日経平均・TOPIXの両方でもみ合いだったわけですが、こうした値動きによって時間調整が進んだと見るならば、株価がそろそろ方向感を持った動きになってもおかしくはありません。図1と図2の日足チャートを見る限りでは下方向がやや優勢ではあるものの、もしかすると「意外高」があるかもしれません。

 その理由の1つが需給面のアク抜けです。JPX(日本取引所グループ)が毎週公表している『投資部門別売買動向』を見ると、今年の1月第2週からずっと売り越しを続けている投資主体が存在します。それは何かというと信託銀行です。

 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などは信託銀行を通じて株を売買しているため、GPIFの動きが信託銀行の買い越し・売り越しに表れていると考えることができます(かなり大ざっぱな見方ではありますが)。GPIFは株や債券などの資産組み入れ比率の上限が決められており、株高の局面が続くと、保有している株の資産価値が上昇して組み入れ比率の上限を超えてしまうため、そのリバランスを目的に株を売却する場面が増えます。

 信託銀行は約3カ月にわたってずっと売り越しを続けていることもあり、GPIFのリバランスが一巡して売り圧力が弱まれば需給が軽くなり、あっさり日経平均が3万円台を回復する展開があるかもしれません。

 続いて、2つめの理由は米国株との出遅れ修正期待です。先週の米国株市場もNYダウ平均株価やS&P500が連日で史上最高値を更新するなど強い動きを見せましたが、前回のレポートでも指摘した通り、日本株はこうした米国株の強さについて行けない場面が増えていて、先週の日本株も同様の展開でした。

 今後、企業決算を手掛かりに日本株への見直し機運が高まれば、米国株にキャッチアップしていく展開もあり得そうです。ただ、今週の企業決算発表スケジュールをチェックすると、日本では日本電産やオービック、ディスコ、エムスリーなどが予定されている一方、米国ではIBMやネットフリックス、P&G、J&J、インテルなどが予定されており、市場の注目度は断然米国の方が高いため、先週と同様に日本株が上げ下げを繰り返す展開になるシナリオも残されています。

 また、「米国株の株高について行けないが、株安にはきちんとお付き合いしてしまう」可能性もあるため、米国株の失速には注意です。

米国株は強い状況が続く。中国リスクに要注意

■(図3)米NASDAQ(日足)とMACD(2021年4月16日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図3は米NASDAQの日足チャートです。

 4月に入ってからのNASDAQはほぼ右肩上がりとなっており、2月16日の直近高値をトライしそうな水準まで株価が上昇してきました。株価と移動平均との絡みを見ても、5日移動平均線に沿って上昇していることが分かります。さらに、25日と75日移動平均線との「ゴールデンクロス」を達成し、下段のMACDも順調に上昇基調を描いていて、強い状況といえます。

 史上最高値を更新しているNYダウやS&P500もNASDAQと同様に、5日移動平均線に沿って上昇しています。

 日足ベースでは、トレンド転換の強いサインはないため、今週も上方向への意識が強い状況が続きそうです。ただし、株価が5日移動平均線を明確に下抜けた時には注意が必要です。経験則として、株価が5日移動平均線を下抜けると、25日移動平均線まで調整しやすい傾向があり、実際に上の図3でも同様の場面が見られます。

 目先の相場の視点は企業業績に向かいがちですが、その一方で、国内の新型コロナウイルスの状況や、日米首脳会談の内容を受けた市場の反応など、決算以外の材料にも注意しておく必要もありそうです。とりわけ、先週末16日(金)行われた日米首脳会談では、共同声明に「台湾」が記され、中国側が不満の姿勢を見せている、中国絡みのリスクには警戒を要するかもしれません。

 これまでの中国リスクといえば、米中関係の動向がメインで、間接的に日本に影響があるという見方が中心でしたが、ここにきて、いわゆるウイグル問題や台湾問題によって直接的な影響が出始める可能性が出てきています。

 実際に、先日のファーストリテイリングや良品計画などの株価は中国新彊綿の取り扱いをめぐる思惑が影響して荒っぽい値動きを見せた経緯があるなど、中国との関わりが深い企業にとっては、中国の巨大な消費市場を失う懸念と、自国を含む他の国からの信頼を失う懸念との板挟みとなる場面が増えることが考えられ、さらに、人権問題を無視する企業の姿勢はESGやSDGsの観点から投資家からの資金が入ってこなくなるデメリットもあります。

 サプライチェーンの見直しも含めて、企業は中国との距離感が課題になってきそうです。 したがって、決算内容を好感する動きが期待される一方で、素直に上値を試しにくい相場環境も想定されるなど、相場に中長期的な方向感が出てくるにはまだ時間がかかるかもしれません。

日経平均・TOPIXに膠着感が強まる場合はマザーズ指数が注目される

ちなみに、日経平均やTOPIXに膠着(こうちゃく)感が強まった場合には、マザーズの動きが注目されそうです。

■(図4)マザーズ指数(日足)とMACD(2021年4月16日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 最近のマザーズ指数の動きを整理してみると、2月16日と3月18日の高値同士を結んだ「上値ライン」を上抜け、1,250pに上値を抑えられつつもみ合いが続いています。この上値ラインは、ダブルボトム形成における「ネックライン」と見ることもできます。

 先週末16日(金)終値がほぼ高値引けであることや1,250p台に乗せてきており、ボックスを上放れしそうな状況になっています。今週のマザーズ銘柄の決算発表はマクアケのみと少ないこともあり、軽い値動きで上値をトライする場面があるかもしれません。