IPOは初値で売れば勝率9割だが…

 このように、抽選に当選してIPOを入手した場合、実に9割以上の確率で、初値が公募価格を上回ります。利益を得られる可能性が極めて高いといえます。

 そのため、IPOを入手した人は、初値で売るというのがセオリーとなっています。

 では、IPOを入手した後、初値で売らずに持ち続けるという選択肢はないのでしょうか。

 IPOにより新規上場した後の株価の動きは、銘柄によりまちまちです。初値を付けた後も上昇を続ける銘柄もありますが、初値を付けてから株価が下落してしまう銘柄の方が多いのです。

 例えば公募価格3,000円で100株当選、初値が5,000円、1カ月後の株価が4,000円とすると、初値で売却した方が、1カ月後に売却するより有利となります。

 実際、これまで2021年中に新規上場したIPO25銘柄につき、初値と4月9日の終値とを比べた結果、実に17の銘柄が初値を下回っています。2月に新規上場した銘柄に限れば、実に7銘柄中6銘柄が初値を下回っていて、中には初値から40%以上下落しているものもあるのです。

 今はマーケットの環境も悪くないので、2021年中のIPO銘柄で公募価格を割り込んでいるものはありませんが、今後銘柄によっては公募価格さえも割り込んでしまう可能性も十分にあります。

 こうした理由から、公募株に当選した人は、「初値を付けた後の値上がりの期待」よりも「初値を付けた後の値下がりのリスク」を回避して利益をしっかりと確保するため、初値で売却しているケースが多いのです。