コロナショックでJ-REITは、日経平均を上回る暴落となった

 資産形成を行う際、「株と債券」に分散投資することは大切です。それは、ポートフォリオ運用の初歩的知識です。ところが、その常識が今、日本で通用しなくなってきています。長期国債(10年)の利回りがゼロ近辺に低下してしまったからです。

 外貨投資ならば、外国株と外国債券に分散投資する戦略が有効ですが、円建ての投資では、債券に分散投資する価値はほとんどありません。利回りが低くなり過ぎたため、お金を「守る」効果はあっても、「増やす」効果はほとんどありません。

 そこで、利回り投資の対象として国債に代わって「J-REIT」に投資してはどうかと考える投資家も出てきています。REITは利回りを得るために投資するものですから、日本株といっしょに保有して、ある程度分散投資効果があるのではないかと期待されました。

 ところが、コロナショックではまったく分散投資効果はありませんでした。一部の投資家の投げ売りによるものとは言え、J-REITは日経平均よりも大きく下げてしまいました。株が下落する局面で、資産を守る効果はまったくありませんでした。

日経平均と東証REIT指数の動き比較:2019年末~2021年4月7日

出所:ブルームバーグより作成、2019年末の値を100として指数化

 確かに、ホテルREITは観光客の激減で大きなダメージを受けました。流通(小売り)REITも一時大きなダメージを受けました。ただし、REITの大半を占めるオフィスREITが受けたダメージは、これまでのところ軽微です。物流施設に投資する物流REITは、コロナ禍でEコマースがさらに伸びた恩恵で、業績好調です。業績だけみると、ホテルREITを除き、ディフェンシブ(防衛的)であったと言えます。ただし、価格の下落は大きく、価格はまったくディフェンシブではありませんでした。

 コロナ禍でREITが受けたダメージが、日本株全体が受けたダメージよりも相対的に軽微だったにもかかわらず、東証REIT指数の方が、下げが大きくなったのには、もう一つの懸念が影響した可能性もあります。「コロナ後に対する懸念」です。

 オフィスREITは、短期的には、大きなダメージを受けていませんが、コロナ禍で在宅勤務が全国に広がった影響で、都市部の不動産需給が緩み始めていることが懸念されています。コロナが収束しても、在宅勤務が広がる流れは変わらないと考えられていますので、次第に都市部の不動産への需要が、じわじわと減っていくことが懸念されています。今受けているダメージよりも、将来受けるかもしれないダメージへの懸念が、オフィスREITの価格下落に影響しました。