キャッシュ・ポジションでリスクを調節する

 さて、最近ではベア型のETFが登場しています。だから(相場が下がりそうだな)と思ったときは、マーケットが下がったときに株価が上がる、ベア型ETFを買うことでヘッジをすることができます。

 それ自体、悪い発想ではないのですが、上で述べたようなシステミック・リスクが発生した場合は、資本市場の思いもかけなかった部分で脆弱(ぜいじゃく)性が露見し、せっかくのヘッジポジションがうまく作動しないということも起こります。実際、2008年のリーマン・ショック時は、投資銀行がポートフォリオ・ヘッジの相手方になっていたせいで、ベアスターンズやリーマンの経営に不安が出た際は、それらの金融機関との間で結ばれた取り決めが履行されない懸念が出ました。

 つまり、本当にマーケットがギクシャクしてきたときは、「キャッシュが王様(Cash is King)」なのです。その場合は、自分のポートフォリオの持ち株を少し減らすことでリスクに備えたほうが、結果的には良くなる場合が多いのです。

 ここまでをまとめると、リスクは愉快なものではありませんが、「リスクをゼロにする」という考えは夢物語に近いことです。すると、ある程度リスクと折り合いをつけることが必要になります。

 リスクを調整するには分散を図ることと、全体のポジションの大きさを調節することの二つの方法がいちばんシンプルです。ヘッジを試みることもできなくはないですが、それはヘッジポジションが誘発する、新たなリスクを上乗せするような行為に終わる場合もあります。

※本連載は本章で終了です。引き続き、広瀬隆雄氏の人気連載・わかりやすいグローバル投資レポート海外ETFデビュー講座をご愛読ください。