株式投資のリスクを管理する

 それではどうすればリスクとうまくつき合えるのでしょうか?

 ここで皆さんに理解していただきたいことは、リスクをゼロにすることが、必ずしも最善の状態とは言い切れないという点です。

 世の中はリスクにあふれています。例えば大学受験のとき、自分の希望する大学に合格しないリスクがあります。また、就職活動がうまくいかないリスクもあるでしょう。さらに結婚するとなると生まれや育ちの違う二人が一緒になるわけですから、いつも仲睦まじいとは限らず、時には衝突することもあると思います。つまり、結婚が破たんするリスクがあるわけです。さらに奥さんが妊娠すれば、出産の際のリスクを避けて通ることはできません。

 皆さんはそのようなリスクを回避するために大学受験を諦め、また結婚を諦めますか?

 このように人生というもの自体が、リスクの連続であり、それらのリスクを忌避し、自分の殻に閉じこもると、普通の人が享受する、さまざまな人生の楽しみ、喜びというものすら体験できなくなってしまうのです。

 株式投資もこれと同じで、リスクをゼロにするということは、ただ現金を抱え続けるということを意味し、黙っていてもジリジリ上がっていく生活費に対し、自分の現金の購買力が低下することを、何もしないで見ていることになるわけです。

 つまり、自分の許容できる範囲内でリーズナブルなリスクを取ることが必要になるというわけです。そのことをカリキュレーテッド・リスク(計算されたリスク)と呼ぶ場合があります。それは自分なりにリスクと折り合いをつけることに他なりません。

 ここで「自分なりに」という表現を用いましたが、リスクの許容度は個人差があり、リスク管理は、とても個人的な問題なのです。

 それを断った上で一般に個人投資家の皆さんの中には無意味なリスクを取る人が散見されます。もし自分の全財産を1銘柄だけに突っ込んだ場合、その銘柄が急落すれば大きな痛手を被ります。

 もちろん、手持ちの投資資金との兼ね合いで、投資を始めたばかりの人はそんなに多くの銘柄に投資することはできないと思います。その場合はETF(上場投資信託)を買うことで分散効果を得ることができますし、もし、個別株を買う場合は極めて保守的な、退屈過ぎるくらいの銘柄から始めるのが良いでしょう。

 そして、資金が増えて銘柄が買い足せるようになったら、速やかに5銘柄くらいに分散する方が良いと思います。