まだ小規模だが、中国の自動車触媒など一部の産業用需要の増加がはじまっている

 ここまで、分野別の需要に注目してきました。ここでは、国別、特に中国のプラチナ消費について確認します。中国のプラチナ消費と言えば、これまで、“宝飾向けが急減中”、“自動車排ガス浄化装置向けには使われない(パラジウムをメインとしているため)”という傾向がありましたが、近年は、自動車排ガス浄化装置向けの需要が、増加しつつあります。

 パラジウムに比べた割安感がある点に注目が集まり、ガソリン車だけでなく、ディーゼル車の製造が拡大している可能性があります。

 また、“ガラス”向けの需要が増加している点も、注目です。プラチナのガラス向け需要とは、
融点(固体が液体になりはじめる温度)が高い特徴を利用し、LCD(液晶ディスプレイ)用のガラス溶解装置などに用いられる需要です。

 液晶ディスプレイを搭載した電子機器の製造が活発化している点が、中国の同需要を押し上げている可能性があります。

図:中国の産業向けプラチナ需要 単位:千トロイオンス

出所:WPICのウェブサイトのデータより筆者作成

“新時代”の要素も加わり、中長期的には1,450ドルを目指すか

 また、統計データではまだ目立っていないものの、今後、新しい需要が生まれ、プラチナ価格を押し上げる可能性があります。コロナ禍の折、世界中に急速に浸透し、ブーム化しつつある“脱炭素”が、水素生成装置や燃料電池車の発電装置の電極部分向けの、プラチナの需要を拡大させる可能性があります。

 また、日欧で大気中の二酸化炭素を吸収して作られる合成液体燃料の研究が進んでいますが、この研究が進めば進むほど、合成液体燃料を添加した燃料で自動車が走る可能性が高まります。

 添加される燃料は、ガソリンや軽油といった化石燃料由来の燃料であるため、合成液体燃料が一般化すればするほど、化石燃料の使用が温存される、つまり、プラチナやパラジウムを用いる排ガス浄化装置を搭載する自動車の需要が温存されることになります。

図:プラチナ市場における“新時代”の材料

出所:筆者作成

 本レポートを作成しながら感じたことは、統計データ上、今のところ、プラチナ市場を悲観的に見る必要はなさそう、という点です。コロナ禍であっても、自動車排ガス浄化装置向けの需要は、リーマンショック時ほど減少していない、むしろ2021年は世界経済の回復の流れを受けて、同需要は今後回復することが見込まれています。

 また、中国におけるガラスや自動車排ガス浄化装置向けが、近年、増加傾向にあるなど、これまでになかった流れが起きつつある需要もあります。

 統計外で言えば、ブーム化している“脱炭素”がプラチナに新しい需要を与えたり、既存の需要を一定程度、温存したりする可能性もあります。

 全体的には、長期的視点で見れば、「プラチナ6年ぶりの高値!たった1週間で10%上昇!1,450ドルも射程範囲に入ったか」 で述べたような、1トロイオンスあたり1,450ドル程度まで上昇する可能性があると、考えています。

[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

純金積立

金(プラチナ、銀もあり)

国内ETF/ETN

1326 SPDRゴールド・シェア
1328 金価格連動型上場投資信託
1540 純金上場信託(現物国内保管型)
2036 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ダブル・ブルETN
2037 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ベアETN

海外ETF

GLDM SPDRゴールド・ミニシェアーズ・トラスト
IAU iシェアーズ・ゴールド・トラスト
GDX ヴァンエック・ベクトル・金鉱株ETF

投資信託

ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)
三菱UFJ純金ファンド

外国株

ABX Barrick Gold:バリック・ゴールド
AU AngloGold:アングロゴールド・アシャンティ
AEM Agnico Eagle Mines:アグニコ・イーグル・マインズ
FNV フランコ・ネバダ
GFI Gold Fields:ゴールド・フィールズ

国内商品先物

金・金ミニ・金スポット・白金・白金ミニ・白金スポット・銀・パラジウム

海外商品先物

金、ミニ金、マイクロ金(銀、ミニ銀もあり)