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アパレル・セクターについて
広瀬 隆雄
わかりやすいグローバル投資レポート
グローバル投資に精通する広瀬隆雄氏に、新興国株式だけでなく、米国株、欧州株をはじめとする先進国株式など、海外全般の経済や投資ストラテジーをご紹介いただきます。

アパレル・セクターについて

2017/3/27
金相場は下落。医療保険制度改革(オバマケア)見直しに関する法案の採決を控え、米金利が上昇したことから売りが出たようである。短期的には買われすぎ感があり、調整が入りやすい地合いにある模様。またドルが小幅に上昇したことも、上値を抑えやすい。
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【今日のまとめ】

  • アパレル業界は過渡期にある
  • ラルフ・ローレンは業績が悪化し、CEOが去る
  • PVHは海外市場が好調
  • カナダ・グースは大きな成長余地がある
  • ジェイ・ジルは顧客データを活用するのが上手い
  • ブイ・エフ・コープは堅実に経営されている

過渡期にあるアパレル業界

アパレル業界は過渡期にあり、厳しい状況に置かれています。

まずアパレル企業はメーシーズをはじめとする百貨店に商品を卸しているわけですが、ショッピングモールへの客足が遠のく中、百貨店の店舗閉鎖が相次いでいます。このことはアパレル企業の商品が置かれる場所が減ることを意味します。

つぎに下院が提案している税制改革法案には国境税調整という項目が含まれています。これは輸入品に一律20%の関税をかける措置です。すると中国やバングラデシュで縫製されたアパレルに依存している企業は、大きな影響を受けると予想されます。

さらにアマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)からの攻勢に対抗するため百貨店・専門店各社はオンライン戦略を押し進めています。アパレル企業も、この新しい環境に順応してゆく必要があります。

ラルフ・ローレン

ラルフ・ローレン(ティッカーシンボル:RL)は1967年に創業されたラグジャリー・アパレル企業です。

同社は卸売、小売、ライセンシングという三つのセグメントで活動しています。

卸売は売上高の約45%を占め、世界の百貨店や専門店にラルフ・ローレンの商品を提供しています。

小売は売上高の53%を占め、自社店舗やeコマースを通じてラルフ・ローレンの商品を販売しています。

ライセンシングは売上高の2%を占めています。他社にラルフ・ローレンのブランドを使用することを許可し、商標使用料を得ています。

ラルフ・ローレンの商品は、百貨店に代表される世界の1万3千カ所の小売ロケーションで販売されています。また自社店舗493店(2016年4月現在)、店舗内店舗583カ所(同)でも販売されています。

このところ同社の業績は芳しくありません。

消費者の嗜好は劇的に変化しており、それがラルフ・ローレンを直撃しています。2年前頃から既存店売上比較に異変が見え始め、このところはずっとマイナスを続けています。ちなみに直近の第3四半期の既存店売上比較は-4%でした。

売上不振に応じて営業マージンも5年前の16.2%から現在は10%を切る水準まで落ち込んでいます。

この危機に直面し、ラルフ・ローレンはブランドのあり方だけでなく、生産工程、品揃え、サプライチェイン、マーケティング、来店客への対応、百貨店・アウトレット・eコマースの見直しなど、同社のビジネスのあらゆる側面をレビューし、「WAY FORWARD」という巻き返し戦略を練りました。

具体的には、コア・ブランドがおろそかになっており、現在の販売チャンネルでは慢性的な過剰在庫の問題に陥ることが認識されました。

そこで「RLX」、「POLO SPORT」、「CLUB MONACO」、「RRL」、「CHAPS」、「HOME」、「AMERICAN LIVING」などの周辺ブランドを縮小し、「RALPH LAUREN」、「POLO」、「LAUREN」という三つのコア・ブランドに集中する戦略が打ち出されました。

その関係で第3四半期の売上高は前年比-11.9%でした。

つぎに商品を企画してからそれが店頭に並ぶまでのリードタイムが15カ月と長すぎるので、それを9カ月に短縮する努力が始められています。

これまでは売れ残った商品をアウトレットで捌くことで消費者が値引きに慣れてしまい、ブランドのイメージを毀損する結果になっていましたが、これを改めてゆく方針です。

同社のステファン・ラーソンCEOは5月1日付で退社する予定です。次のCEOを探す間、ジェーン・ニールセンCFOが当座の経営を切り盛りすることになります。

同社は膨れ上がり過ぎた卸売在庫の圧縮に努めています。売れ残った商品を自社のオフプライス・ストアで売り捌くことはラルフ・ローレンのブランド・イメージを毀損するので、今後は控える計画です。

またeコマースは値引き競争の舞台となりやすいので、現在はプロモーションを減らしています。その関係でeコマースの売上比較もマイナスになっています。

2017年度の売上高は前年比-10~14%が予想されています。また営業マージンは10%前後を見込んでいます。

2018年度の売上高は前年比-5~9%を予想しています。また営業マージンは2017年度より若干改善を見込んでいます。

【略号の読み方】
DPS 一株当たり配当
EPS 一株当たり利益
CFPS 一株当たり営業キャッシュフロー
SPS 一株当たり売上高

PVH

PVH(ティッカーシンボル:PVH)はフィリップス・バン・ヒューゼン(Phillips-Van Heusen)の頭文字を取った企業名です。

同社は1881年に創業されたシャツ・メーカーで、「アロー」という登録商標のシャツで有名です。

その後、同社は2003年にカルバン・クラインを買収、2010年にトミー・ヒルフィガーを買収しています。

現在の売上高構成は、トミー・ヒルフィガーが42%、カルバン・クラインが36%、そしてアロー、ワーナーズ、オルガなどから成るヘリテージ・ブランド部門が22%となっています。

また地域別売上高は米国が55%、欧州が27%、アジアが9%、アメリカを除く米州が9%となっています。

トミー・ヒルフィガーは「アメリカっぽい」スタイルを体現したブランドで、主に25歳から40歳をターゲットにしています。

同社の製品はメーシーズをはじめとする百貨店で売られているほか、自社店舗、アウトレットも展開しています。

トミー・ヒルフィガーはとりわけ欧州で人気のあるブランドで、同ブランドのグローバル小売売上高の約4割が欧州となっています。ブランドEBITマージンは11.9%です。

カルバン・クラインは1968年にファッション・デザイナー、カルバン・クラインによって創業されたブランドです。

カルバン・クラインはニューヨークのマジソン街に旗艦店を持っており、ハイエンドのデザイナー・アパレルならびにアクセサリーを販売していますが、そのブランド・イメージから来る「後光効果」を利用し、ジーンズや下着まで、あらゆるセグメントに進出しています。

同ブランドのグローバル小売売上高の約6割は北米であり、欧州は19%、アジア太平洋は18%となっています。ブランドEBITマージンは14.9%です。

ヘリテージ・ブランド部門のEBITマージンは7.1%に過ぎず、売上高も2014年、2015年と相次いで減少しています。

PVHにとって幸いなのはトミー・ヒルフィガーならびにカルバン・クラインの海外における売上成長が好調だという点です。それを背景に、これらのブランドは今年、年率+5%程度の売上高成長率を実現できる見込みです。

カナダ・グース

カナダ・グース(ティッカーシンボル:GOOS)は1957年にカナダのトロントで創業されたダウンジャケットのメーカーです。

同社の製品はカナダ北極圏レンジャーズをはじめ、探検家、アウトドア愛好家などに愛用されています。たんなるファッションではなく、本当に暖かい、機能性のある製品作りをしているので、オーセンティックなブランド力があります。

同社の製品は職人芸で丁寧に製作されており、丈夫で、軽く、長持ちします。同社の製品はカナダ国内で生産されています。単価が高い商品なので、ムダに沢山の商品を作り過ぎないということに注意を払っています。

カナダ・グースというブランドは、カナダ国内では認知度が高い(76%)ですが、アメリカ(16%)やその他の国々では未だ余り知られていません。つまり現時点では、一部のソフィスティケートされた消費者の間での「知る人ぞ知る」ブランドなのです。

海外では、英国、フランス、日本、韓国などにおけるマーケティング展開が先行しています。今後、中国やドイツなど未開拓の市場に参入する予定です。これは同社がマーケティング・キャンペーンでブランドを広めてゆくに従って、同社の売上高も増加が見込めることを意味します。

同社はクチコミによる草の根のマーケティング活動を基本としています。

同社の卸売ネットワークは未だ限られており、今後、パートナーの数を増やす余地が大きいです。また店舗内店舗などの展開も端緒に付いたばかりです。

さらに同社はeコマースにも注力しています。

同社はカナダのトロントとニューヨークに旗艦店をオープンしたばかりです。旗艦店のオープンは同社のブランド認知度を高めることに大きく寄与しました。

同社の製品は冬の間だけしか売れないため、四半期の業績には大きな季節性があります。

同社の株式の57%はプライベート・エクイティー・ファンドのベイン・キャピタルが支配しています。

ジェイ・ジル

ジェイ・ジル(ティッカーシンボル:JILL)は裕福層のおとなの女性をターゲット顧客に絞ったアパレル・ブランドです。

ジェイ・ジルは、もともとカタログ販売からスタートした企業なので、オンライン+カタログの総売上高に占める割合は42%と高いです。

同社は実店舗の出店に際し慎重にロケーションを選び、生産性の低い店舗や過剰在庫を抱えることを極力避けています。

このため他社が店舗やアウトレットの閉鎖をおこなう中、ジェイ・ジルはそういうリストラクチャリングをする必要は全くありません。

実店舗からeコマースへと移行することがマージンに与える影響を心配する必要も、同社の場合、ありません。

同社はカタログ販売時代からの習慣で、顧客データを豊富に持っており、それを積極的に活用しています。つまりデータに基づいた、かしこいマーケティングを心掛けているのです。

同社の既存店売上比較は2014年が5.4%、2015年が12.4%、2016年の最初の9カ月が10.0%と大変立派な数字でした。

ブイ・エフ・コープ

ブイ・エフ・コープ(ティッカーシンボル:VFC)は1899年に創業された老舗のアパレル・メーカーです。同社は30以上のブランドを傘下に持っており、幅広い商品を展開しています。

おもなブランドは「Vans」、「The North Face」、「Timberland」、「Wrangler」、「Lee」、「Nautica」、「Kipling」になります。

同社の製品は百貨店、専門店などを中心に販売されています。同社は最近、直販店ならびにオンラインにも注力しており、DTC(ダイレクト・ツー・コンシュマー)比率は28%に上っています。

地域別売上高は米州が70%、欧州が20%、アジア太平洋が10%となっています。

2016年の売上高成長率は+1%でした。海外売上高成長率は+6%でした。

ブランド別では特に「Vans」が2016年売上高成長率+7%と好調でした。「Vans」の第4四半期は+16%でした。 

「The North Face」、「Timberland」は卸レベルでの在庫管理を強化しています。

今後は「Vans」、「The North Face」、「Timberland」という同社の中で最も強い三つのブランドに注力してゆく方針です。

海外市場ではこれまで出遅れていた中国市場に積極的に参入する考えです。

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