今日は、最近話題になることが少なくなった「含み資産株」の話をします。今、日本の株式市場には、保有不動産に巨額の含み益があるにもかかわらず、株価が、純資産価値と比べてきわめて割安な水準に留まっている銘柄がたくさんあります。

 2005年に大活躍したハゲタカファンド(買収ファンド)がいれば、まっさきに狙われそうな銘柄群です。ところが、2006年以降、ハゲタカファンドは日本からほとんど撤退しました。

 ハゲタカ去り、割安な「含み資産株」に、敵対的買収をしかける買い手はなくなりました。純資産価値と比較して割安とわかっていても、注目する投資家がいなくなりました。

 今日のレポートでは、そういう「含み資産株」に改めてスポットライトを当てます。

コロナ禍で不動産ブーム終了、不動産需給は少しずつ悪化

 アベノミクスが始まった2013年以降、景気回復と異次元金融緩和の効果で、不動産需給が引き締まりました。2020年まで、空室率の低下・賃料の上昇が続き、都心部は不動産ブームの様相を呈していました。

都心5区オフィスビルの賃料・空室率平均の推移:2004年1月~2021年1月

出所:三鬼商事、都心5区は東京都千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区

 ところが、2020年にコロナ禍が起こり、不動産ブームは終了しました。昨年の緊急事態宣言下では、多くの企業が一時的に業務を停止せざるを得ませんでしたが、その直後から、リモートワークやリモート会議が一気に広まりました。多くの企業が、大都市のオフィスに従業員を出社させることなく業務を回す方法を確立させていきました。

 この流れは、コロナが収束しても変わらないと考えられます。企業にとっても従業員にとっても、リモートワークのメリットが大きいことがわかったからです。企業にとっては、オフィスコスト削減のメリットがあります。会社に来る社員数が恒常的に減ることが見込まれるようになった企業では、大都市のオフィスを一部解約する動きが出ています。

 リモートワークは、従業員にもメリット大でした。通勤の労力や時間をセーブできる分、共働きで家事・育児・介護を分担する世代に大きなメリットがありました。

 もちろん、対面サービスが必須で、すぐに在宅ワークに転換できない業態も多数あります。それでも、ITの活用により、あらゆる産業で少しずつリモートワークが浸透していく流れは変わらないと考えられます。

 オフィス需給軟化によって、2020年から空室率の上昇、平均賃料の低下が始まっています。これはまだ序の口と考えられます。オフィス需給が急激に悪化する懸念は低いものの、長い時間をかけて少しずつ軟化していく可能性があります。