上海市と大手国有企業のデジタル化への取り組み

 習近平からの「鶴の一声」を受け、各自治体や国有企業を中心に、党・政府のデジタル化を全面的に支持する声明や動向が、特にここ1~2年で顕著になってきています。

 例として、「都市のデジタル化」を全国に先駆けて提唱してきた上海市の状況を見てみましょう。上海では、「一網統辯」、「一網統管」という言葉に代表されるように、行政サービスや都市の運営をすべてインターネット上で統一的に推進、管理するという目標を掲げ、実践してきています。

 今年1月、上海市政府は『上海市のデジタル化の全面的推進に関する意見』というガイドラインを発表しました。そこには、

(1)経済(製造業、科学技術、研究開発、金融サービス、物流、農業、ネット消費など)
(2)生活様式(公共衛生、健康、教育、養老、就業、社会保険、生活コミュニティーなど)
(3)政府のガバナンス(公共安全、危機管理、都市計画、交通管理、市場監督、生態環境など)

 という3つの分野において、デジタル化を全面的に推し進めていくことが掲げられています。

 例えば、(3)に関して、2020年4月以来、上海では新たに登記した(上海市では1日平均、約2,000社が登記されている)企業に電子営業許可証と電子判子が発行されています。

 コロナ禍でも、デジタル化というマクロ政策は大いに力を発揮した模様です。ビッグデータを用いて、上海という大都市において「三密」を回避する方法が取られていました。オンライン授業や食料・食物のECやデリバリーサービスといった分野を含め、デジタル化がコロナ抑制と経済再生にプラスに作用したと上海市政府は振り返っています。

 上海市に負けまいと、北京市政府も、第十四次五カ年計画(2021~2025年)が始まる今年から、デジタル経済を推し進めるためのインフラを整備すべく、毎年平均100億元(約1,600億円)を投資していく政策を打ち出しました。

 5Gなどはその主要なターゲットであるようです。ちなみに、第十三次五カ年計画(2016~2020年)期間において、中国の4Gユーザーは7.6%から81%まで増え、5G対応基地局は72万箇所(世界の約7割)作られているとのことです。

 2021年に入り、電力、石油、航空、軍事、電信といった分野における国有企業が、第十四次五カ年計画期間において、自らの企業運営、ビジネスモデルに、デジタル化を大々的に導入する旨を発表しています。

「鶴の一声」がここでも威力を発揮していると言えます。大御所で言うと、中広核(China General Nuclear Power Corporation)、中国鉄物(China Railway Materials Group Corporation)、中国石化(Sinopec)、中国石油(Petro China)、中国聯通(China Unicom)、中国南方航空(China Southern Airlines)などがすでに具体策を発表しています。

 石油最大手の一つであるペトロチャイナは、これからの5年間で「デジタル中国石油」の初期段階を完成させるべく、デジタル技術を石油・天然ガスの産業チェーンに導入した商品、サービス、ロジスティクスを開発していくこと、AIやビッグデータ解析を活用した新商品の開発に尽力し、研究開発の成功率を向上させると説明しています。