デジタルは中国経済をどう変えるか?

 ここに興味深い報告書があります。1989年、国務院の批准を経て、経済特区・深セン市に設立された中国(深セン)総合開発研究院(China Development Institute)が、昨年11月に発表した『中国デジタル化への道』です。

 この報告書は、デジタル経済は、党・政府が大々的に推し進める供給側構造改革や国内大循環、国内外双循環にとっても重要な要素になると主張しています。また、中国が1994年にインターネットを導入して以来、中国のIT企業は世界経済の中でも頭角を現し、デジタル経済の推進にも大きく貢献してきたと指摘しています。

 政府と市場の関係性などをめぐり国際的に物議を醸してきた、アリババ、ファーウェイという二社の名前を指名したうえで、これらの企業が、「新たな時代において、より重要な役割を担っていく。循環経済を促し、デジタル化によって中国の構造的に深い問題の解決を探索し、中国と世界の対話を模索する新たな力になっていく」と述べているのです。

 私が報告書のなかで最も注目したのが、デジタル経済をめぐるデータ予測です。報告書によれば、2020~2025年の期間、中国のデジタル経済は年平均で15%前後の成長を保持する見込みであり、2025年には、中国デジタル経済の規模は80兆元(2030年には100兆元)を突破し、デジタル経済によって創出される雇用者数は3.8億人に達する見込みとのこと。

 年平均15%成長ということは、経済全体の約3倍のスピード感です。80兆元というのは、2019年における日本、ドイツ、英国のGDPの総和に相当し、2025年の時点で、デジタル経済が中国経済全体の約55%を占めることになります。

 一方、デジタル経済が創出する雇用者数は全人口の約4分の1ですから、そのときの労働人口にもよりますが、デジタル経済のほうが生産性の向上により強く寄与する可能性が高いと言えます。