マイナス成長の遼寧省で目撃した景気の実態

 その意味で、私の中で非常に有意義だった体験が瀋陽市での仕事です。

 2017年1月に発表された2016年の中国実質GDP成長率は前年比6.7%増でしたが、遼寧省は2.5%減と、唯一のマイナス成長を記録しました。しかも当時、全国的に問題になったように、遼寧省内で統計データをねつ造する事件が明るみになり、議会で公式に審議し、関係者の処罰に至るという異例の展開となりました。

 特に、2011~2014年にかけてはひどかったようで、李希(リーシー)遼寧省書記(当時)が2017年3月の全人代で行った報告によれば、ある鎮(行政区)では、1年の財政収入が160万元だったのに2,900万元超、ある市は、一定規模以上の企業が281社しかないのに1,600社以上と申告していたとのことです。経済統計という問題が政治問題化し、遼寧省はバッシングを受け、全国各地から「お荷物扱い」されました。

 まさに、このニュースが飛び込んできたその日、私は遼寧大学から徒歩15分くらいのところにある焼き肉屋で、同僚と昼食を取っていたのですが、店内で目を疑うような、ビールの販売を宣伝する張り紙が飛び込んできました。

「買一送三」

 1本注文すると、3本無料でサービスしてくれるという意味です。中国では、ショッピングモールなどで、この手のセールをよくやります。私も米国のモールや空港などで「buy one, get one」というセールを見たことがあります。ただ、さすがに「buy 1 get 3」を目撃したのは初めてのことです。

 皆さんはありますか?

 それだけ景気が悪かったということです。焼き肉屋の付近にあった靴屋でも、アディダスのシューズやナイキのパーカーが「買一送二」で売られていました。

 中国において、私の中で、現場の経済活動と、発表された経済統計とが一致した、数少ない経験でした。