サービス産業の回復が遅れる中、製造業の景況回復

 コロナ感染再拡大・緊急事態宣言の発令が不安視される中、企業業績に二極化が生じつつあります。外食・観光・航空業などサービス産業の不振が際立つ中、製造業の景況に回復感が出ています。中国を中心に、世界的に製造業の景況が回復している恩恵が、日本の製造業にも及んでいます。

 需要急増で、生産が間に合わなくなっているのが、半導体産業です。半導体の需給ひっ迫は長期化しそうな気配です。第四次産業革命(AI[人工知能]・IoT[モノのインターネット]など活用した技術革新)の進展で、データセンター・5G(第5世代移動体通信)・自動車向けなどで半導体の需要が拡大しており、空前の半導体ブームに発展する可能性があります。

 日本の製造業全体に追い風となるのが、自動車販売・生産の回復です。中国や米国での自動車販売の増加にともなって、世界的に自動車生産が急速に回復してきています。昨年前半、生産が落ち込んでいた影響で在庫が少なくなっており、米国などで生産がややひっ迫しています。

世界の自動車販売台数

出所:OICA(国際自動車工業連合会)より楽天証券作成。2020年は楽天証券予想

 世界の自動車販売は、2008~2009年にリーマンショックでマイナスとなった後、2010~2017年は安定成長が続きました。ところが、2018年・2019年と減少し、2020年はコロナショックでさらに▲14%落ち込むと予想しています。

 ただし、自動車販売は、循環します。コロナショックで昨年前半、買い替えが抑えられてきた間、潜在的な買い替え需要が積みあがってきた効果もあり、昨年後半から、急速に回復しつつあります。2021年の世界自動車販売は、前年比で15.4%の増加になると予想しています。

 日本は、自動車王国です。自動車産業で、ドイツと並び、圧倒的な強さを誇ります。自動車だけが強いわけではありません。自動車製造用ロボット・自動車部品・素材などの関連産業でも、日本は世界をリードしています。自動車生産の回復は、日本の製造業全体に波及効果があります。

 自動車株を積極的に買えるようになるならば、日本株全体への外国人投資家の投資姿勢も、ポジティブに変化する可能性があります。そうなると、日経平均の上値余地も広がると予想しています。