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[動画で解説]「台湾侵攻」中国の本気度は?絶対押さえておきたいチャイナリスク
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2021年、中国は台湾に侵攻するか?

 皆さん、新年あけましておめでとうございます。2021年もよろしくお願いいたします。

 本年の中国は「中国共産党結党百周年」という政治の季節に向き合います。前年に勝るとも劣らぬ話題性、そしてマーケットへの影響が不可避でしょう。本レポートでもそれらの模様を可能な限りお届けしていきたいと思っています。活発な議論をしてまいりましょう。

 今回は、私が日ごろ、東京、香港、ニューヨーク、ロンドン、シンガポールなどを拠点とし、中国を含めたアジアを観察、担当する機関投資家の方々と議論をする中で、最も頻繁かつ切実に聞かれる問題です。新年1本目で重過ぎるテーマになってしまうかもしれないと迷いましたが、あえて攻めます。

「加藤さん、中国は本当に台湾へ侵攻するのですか?」

 なるほど。巨額の資金運用を任されている機関投資家がただならぬ関心を持つのも無理はありません。仮に、中国共産党が人民解放軍を投入し、何らかの形で台湾に対して武力行使をすれば、その結果がどのようなものになろうと、マーケットへの影響は壊滅的なものになるでしょう。単純比較はできませんが、大地震、洪水といった自然災害、リーマン・ショックのような金融危機とは比べものにならない、異なる次元の打撃となるのは間違いありません。世界的な株価大暴落は必至の結末となるでしょう。

 私は、あらゆる中国動向の中で、台湾問題こそ、最大のチャイナリスクだと見ています。

日本経済を支える中国

 実際に、近年、中国の動向がマーケットに及ぼす影響は日増しに深まっています。中国の経済成長率、消費、貿易、投資といった領域の統計そのものが(統計の信ぴょう性を含め)、グローバルマーケットを翻弄(ほんろう)する時代です。日経平均株価にも直接的な影響を与えます。

 安倍前政権で戦略的に推進された外国人観光客の誘致が良い例でしょう。しばしばインバウンド事業と称されますが、内需拡大、国際化、成長戦略という意味でも、少子高齢化が進む日本経済にとっては重要な支柱になり得る分野です。

 日本政府観光局によると、新型コロナウイルスの影響を受ける前の2019年、訪日外国人数は、前年比2.2%増の3,188万人で過去最多を更新しましたが(旅行消費額は約4兆8,000億円)、うち中国からの訪問者は14.5%増の959万人(2位韓国:558万人、3位台湾:489万人、4位香港:229万人)、ダントツで1位です。

 仮に、中国で経済危機が起こり失業者であふれたり、日中関係が悪化し、中国人の反日感情が高まったり、あるいは、昨年のように新型コロナで国境が“封鎖”されたりして、「最大顧客」である中国からの訪日観光客が激減すれば、日本経済、マーケットへの影響は決して軽視できません。

 また、日本の外務省が在外公館などを通じて実施した「海外進出日系企業実態調査」によれば、2017年10月1日時点で、中国に進出している日本企業の総数(拠点数)は3万2,349拠点で、次いで2位は米国の8,606拠点、3位はインドの4,805拠点、4位はタイの3,925拠点、5位はインドネシアの1,911拠点、6位はベトナムの1,816拠点と、大きく引き離しています。

 私がここで強く主張したいのは、政治、経済、社会、外交、軍事、そして新型コロナといった感染症への対策を含め、中国動向が日本の、あるいは日本を取り巻くマーケットへ及ぼす影響は、今後、深まることはあってもその逆はない、従って、常にその動向を注視、分析し、買うにせよ、売るにせよ、必要な準備を怠るべきではないということです。