「株」と「キャッシュ」の分散という考え方

 そこで筆者が提唱したいのが「株とキャッシュの分散」です。

 これは、従来の考え方である「複数の銘柄に分散して投資することで個別銘柄に起因するリスクを小さくする」ことに加え、「できるだけ損失を回避し、利益を最大化する」ことを目的としたものです。

 具体的には次のような方法です。まず業績が好調で、今後株価の上昇が期待できる銘柄を中心に、投資候補とする銘柄をリストアップします。そしてそれらの銘柄の株価のトレンドを確認します。

 もし、多くの銘柄が上昇トレンドにあれば、その後の株価上昇の可能性が高いので、多くの資金を株式に投下します。仮にリストアップした銘柄のうち80%が上昇トレンドであれば、「株式80%、キャッシュ20%」の割合で、複数の銘柄に資金を分散させて投資します。このとき、できれば10銘柄以上に分散できれば理想です。

 逆に、多くの銘柄が下降トレンドにあれば、その後株価がさらに下落していく可能性が高いので、今度はキャッシュを多めにして守り重視のポジションとします。リストアップした銘柄のうち20%が上昇トレンドであれば、「株式20%、キャッシュ80%」として、株価下落によるリスクを小さくするようにします。

 そして、いずれの場合でも投資するのは上昇トレンドの銘柄のみとします。

 こうすれば、銘柄の分散により個別銘柄に起因するリスクを小さくできるだけでなく、マーケット全体の環境に応じて適切なポジションを構築できます。

 上昇相場であれば株式の割合を高め、下落相場であれば株式の割合を低くすることで、上昇相場での利益の極大化、下落相場での損失の極小化を図り、投資成績を向上させることができるのです。

 投資する銘柄を分散させるだけでは、個別銘柄ごとのリスクを小さくすることはできても、株を持つこと自体がリスクとなるような下落相場で資金を守ることは難しいです。

「銘柄の分散」+「マーケットの環境に応じた株式とキャッシュの比率調整」により、利益を得やすい状況下ではより大きな利益を、損失が膨らみやすい状況下ではより損失を小さく抑えるという、足立式銘柄分散の手法をぜひ参考にしてみてください。

【お知らせ】
 このたび、拙著『株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書 改訂版』(ダイヤモンド社)が増刷となり、初版と合わせると累計10万部を突破いたしました。これもひとえに、たくさんの個人投資家の皆様にご愛読いただき、口コミで広めていただいたおかげです。この場を借りて深く御礼申し上げます。

 銘柄選びを自分でできるようになりたいという方、筆者のコラムをご覧になり足立流の株式投資の手法をもっと知りたいと思っていただいた方は、きっとお役に立つ内容になっておりますのでぜひお読みください(足立武志)。

■新刊のお知らせ
筆者・足立武志の最新刊の新書『お金偏差値30からの株式投資』(扶桑社)が2020年12月25日発売!