いくつかの銘柄に分散して投資していますか?
「卵を1つのカゴに盛るな」、あまりにも有名な投資格言です。株式投資においても、一つの銘柄に集中して資金を投下すると、その会社に悪材料が発覚して株価が突然急落したような場合、大きな損失を被ってしまいます。でも、例えば10銘柄に資金を分散させておけば、そのうちの一つの銘柄が突然大きく下落しても、全体から見れば小さなダメージに抑えることができます。
実際、筆者も一つの銘柄に集中して投資し、さらに信用取引でレバレッジをかけた結果、全財産を失った個人投資家のケースをいくつか知っています。
このように株式投資では、ある程度の数の銘柄に資金を分散して投資することで、個別銘柄に起因するリスクをできるだけ小さくすることが、リスク管理の面から重要となっています。
教科書的な銘柄分散の方法には疑問点が
では、複数の銘柄に分散するとき、具体的にどのようにすればよいのでしょうか。伝統的な考えでは、個別銘柄ごとのリスクを打ち消し合うような銘柄選定にすべきとされています。
例えば、業種が偏らないようにするとか、輸出関連株と輸入関連株を両方保有する(円安がプラスに働く業種と円高がプラスに働く業種を保有することで、為替レートの変動による影響を小さくする)、といったものです。
ただ、筆者はこの伝統的な銘柄分散の方法にはやや否定的です。今の日本株は二極化相場です。業績が良い銘柄でなければなかなか株価は上昇しません。また、その傾向は業種ごとの株価の動きにも言え、例えば銀行株のように、株価が長年ずっと上昇していない業種もあります。
確かに投資する銘柄をいろいろな業種に分散させれば、個別銘柄に起因するリスクは低下します。でも、その結果株価上昇の恩恵を受けることができるかというと、それはまた別の話なのです。
また、輸出関連株と輸入関連株を同時に保有する必要もないと思っています。もし、円安になっていれば輸出関連株だけ保有していればよく、円高になれば輸入関連株だけ保有していれば、投資成績は向上するはずです。
いくつかの銘柄に分散して投資することは筆者も大賛成で実践していますが、銘柄の選定方法として、単に銘柄を分散させるだけでなく、より株価が上昇する可能性が高いものを選ぶ必要があると思っています。
単に銘柄を分散させて長期保有しておくだけでは効果に疑問が
伝統的な考え方は、投資資金を全て株式投資に回し(フルインベストメント)、買った株をずっと保有し続ける(バイ・アンド・ホールド)という前提で語られていると筆者は感じます。だから、個別銘柄を原因とする株価変動をできるだけ抑え、かつ長期的に保有することで安定した株価上昇を目指しているのでしょう。
でも、先述のとおり、今の日本株は、単に個別銘柄を長期間保有すれば、みな株価が上昇するわけではありません。上昇するものは大きく上昇し、上昇しないものは5年、10年と全く上昇しないのです。
さらに、業績がよく株価が大きく上昇していた銘柄が、業績のピークアウトで株価も大きく下落してしまうこともよくあります。こうした銘柄を長期間保有し続けていると、逆に大きな利益を得る機会を逸してしまいかねません。
複数の銘柄に分散して投資するからといって、その銘柄を長期間ずっと持ち続ける必要はありません。逆に、その銘柄が下降トレンドに転じたら速やかに売らなければ、多額の含み損を抱えた塩漬け株になってしまう危険性もあります。
さらに、マーケット全体が軟調な時期では、ほとんどの銘柄の株価が下がってしまうので、いくら銘柄を分散させたとしても、株そのものを保有すればするほど損失が膨らんでしまいます。
「株」と「キャッシュ」の分散という考え方
そこで筆者が提唱したいのが「株とキャッシュの分散」です。
これは、従来の考え方である「複数の銘柄に分散して投資することで個別銘柄に起因するリスクを小さくする」ことに加え、「できるだけ損失を回避し、利益を最大化する」ことを目的としたものです。
具体的には次のような方法です。まず業績が好調で、今後株価の上昇が期待できる銘柄を中心に、投資候補とする銘柄をリストアップします。そしてそれらの銘柄の株価のトレンドを確認します。
もし、多くの銘柄が上昇トレンドにあれば、その後の株価上昇の可能性が高いので、多くの資金を株式に投下します。仮にリストアップした銘柄のうち80%が上昇トレンドであれば、「株式80%、キャッシュ20%」の割合で、複数の銘柄に資金を分散させて投資します。このとき、できれば10銘柄以上に分散できれば理想です。
逆に、多くの銘柄が下降トレンドにあれば、その後株価がさらに下落していく可能性が高いので、今度はキャッシュを多めにして守り重視のポジションとします。リストアップした銘柄のうち20%が上昇トレンドであれば、「株式20%、キャッシュ80%」として、株価下落によるリスクを小さくするようにします。
そして、いずれの場合でも投資するのは上昇トレンドの銘柄のみとします。
こうすれば、銘柄の分散により個別銘柄に起因するリスクを小さくできるだけでなく、マーケット全体の環境に応じて適切なポジションを構築できます。
上昇相場であれば株式の割合を高め、下落相場であれば株式の割合を低くすることで、上昇相場での利益の極大化、下落相場での損失の極小化を図り、投資成績を向上させることができるのです。
投資する銘柄を分散させるだけでは、個別銘柄ごとのリスクを小さくすることはできても、株を持つこと自体がリスクとなるような下落相場で資金を守ることは難しいです。
「銘柄の分散」+「マーケットの環境に応じた株式とキャッシュの比率調整」により、利益を得やすい状況下ではより大きな利益を、損失が膨らみやすい状況下ではより損失を小さく抑えるという、足立式銘柄分散の手法をぜひ参考にしてみてください。
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