6:コロナ禍でDXが加速し、ビットコインの通貨としての地位は向上する

 “DX(ディーエックス)”とは、デジタル・トランスフォーメーションのことです。簡単に言えば、“社会の根底からのデジタル化”です。デジタル技術を使って、経営や事業のあり方、生活や働き方を“変革”する、という考え方です。

 付加価値を高めたり、効率化を図ったりする、単なるデジタル化(デジタライゼーション)とは、異なります。

 ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)を確保して新型コロナの感染リスクを下げるために、ビデオ会議などのデジタル技術が各所で積極的に導入されているのはもちろんですが、紙や印鑑を廃止したり、免許証や保険証を一元化したり、新しい規格の電波(5G)を用いて、自動運転、医療、介護など、幅広い分野で変革が起きつつあります。一部は、過去の慣習を否定することを含むため、まさに“変革”と言えます。

 DXは、特に“コロナ禍”で進みやすくなっていると考えらえます。コロナ禍で、デジタル化の必要性に強く注目が集まっているためです。社会が、デジタル技術を以前にもまして、必要としているのです。コロナ禍が日本だけの話ではない以上、このような流れは、世界各地で起きています。

 通貨の分野でDXが進めば、何が起きるのでしょうか。紙幣や硬貨といった、手に取ることができるお金の流通量が減少するかもしれません。DXはデジタル技術によって社会を根底から変革するものであるため、DXが浸透した社会で“支払いは紙幣や硬貨で”ということは、少なくなると考えられます。

 社会で起きているDXの波は、さまざまな分野で大きくなる可能性がありますが、“デジタル”は、その名の通り、ビットコインが本領を発揮する舞台といえるでしょう。(コロナ禍がきっかけとなり)DXが浸透すればするほど、ビットコインは通貨としての地位を向上させる可能性があります。コロナ2年目の2021年は、ビットコインの地位をも占うDXの行方にも注目です。

7:主要国・企業のデジタル通貨容認により、ビットコインの通貨としての地位は向上する

 DXの流れの一環とも言える“通貨のデジタル化”が、各所で具体的に進行しています。

 中国ではすでに“デジタル人民元”の実証実験が始まっています。日本でも“デジタル円”の実証実験が2021年春に始まるとの報道もあります。これらは、中央銀行(日本でいえば日本銀行、中国でいえば中国人民銀行)が発行するデジタル通貨(CBDC)、つまり既存の法廷通貨のデジタル化という意味で話題を呼んでいます。

 また、米IT大手フェイスブックが提唱する「libra(リブラ)」も、2021年1月に運用が始まるとの報道があります。銀行口座を持っていなくても、スマートフォンがあれば、決済できるとされており、金融の技術が及んでいない国や地域の人々が商行為に参加できると、期待されています。

 このような流れが本格化すれば、管理者が今よりも容易に通貨を管理しやすくなったり、ニセ札が出回るデメリットを低減できたりするかもしれません。もちろん、ハッキングによる盗難やマネーロンダリングなどのリスクがある点に留意する必要はあります。

 主要国で実証実験が本格化したり、主要企業での運用が始まったりすれば、これまで以上に“デジタル通貨”が一般化すると考えられます。この点もまた、ビットコインの通貨としての地位を向上させる要因になると、考えられます。先述のDXの件と相成り、2021年は“デジタル通貨元年”と呼ばれる年になるかもしれません。

 以上、7大予測として、2020年に起きたさまざまな価格推移・出来事をもとに、2021年のビットコイン相場を展望しました。

 具体的な価格動向については、予測が難しいのですが、7大予測の中で述べた、(1)ビットコイン価格は、市場全体のムード改善時、主要株価指数とともに上昇する、(2)ビットコイン価格は、ドルが大幅下落する時、金(ゴールド)とともに上昇する、(3)ビットコインは、金相場低迷時、無国籍資産として株のヘッジ対象になり得る、が入れ替わりながら、断続的に発生し、かつ、(6)コロナ禍でDXが加速し、ビットコインの通貨としての地位は向上する、(7)主要国・企業のデジタル通貨容認により、ビットコインの通貨としての地位は向上する、といった、ビットコインの地位向上につながる要因が、通年で存在し続ければ、今(2020年12月時点)よりも、2021年12月の価格は高くなっていると、筆者は考えています。

 ただし、(7)について、主要国・企業のデジタル通貨の本格運用が始まった場合、“デジタル通貨の乱立”には注意が必要です。乱立は、注意・関心が分散する要因になるため、本格化するのはビットコインにとって好ましい面があるものの、乱立の域に達した場合は、要注意と言えそうです。

 2020年の動きを見てわかるとおり、暗号資産の分野で起きていることだけを見ていては、ビットコインの価格推移を説明することはできません。株式やコモディティ、ドルなどの、暗号資産の周辺の市場に、ヒントがたくさん隠されています。

 足元のビットコイン価格は、記録的な高値圏ではあるものの、本レポートで述べた予測の多くが程よく現実のものとなれば、ドル建て価格で、次の大台である2万ドルを通過点とし、さらに上値を伸ばす展開はあり得ると、筆者はみています。

 2021年は、単純にチャート(グラフ)を見て“高い”と言わず、周辺材料にも注意深く目を向けて、材料を俯瞰しながら、ビットコインの価格を見守っていくのがよいと、筆者は考えています。