「運用する」、外資マン向けに特別な運用はない

 貯まったお金を効率よく運用しなければならないことは、外資マンでも国内企業勤務者と変わらない。運用にあっては、「長期・分散・低コスト」の3原則を守ることと、金融マンをはじめとする「人間のリスク」(他人から影響を受けて運用判断を間違えるリスク)に注意すべきことがポイントになる。

内外株式のインデックス・ファンド+個人向け国債&ネット銀行の預金

 外資マンで少々お金を持っているからといって、特別に良い運用商品があるわけではないし、原則として運用の「方法」は、金額の多寡にかかわらず一緒でいい。

 リスクを取る資産は内外の株式のインデックス・ファンドに内外半々くらいに投資して、リスクを取りたくない資産は個人向け国債変動金利型10年満期か低金利の下でも幾分利率の有利なネット銀行の預金(一人一行1千万円の預金保険の保護範囲を守るのが基本だ)で運用するといい。

 運用の大枠は以上でおしまいだ。誰かに他の商品を提案されても、検討するだけ時間の無駄で、余計なセールスに嵌まるリスクを増やすだけだ。

確定拠出年金(iDeCoを含む)やNISAはできるだけ大きく使おう

 上記の運用を実行するに当たって、確定拠出年金やNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)などの税制上有利な運用制度はできるだけ大きく使うといい。

 勤務先に確定拠出年金がある場合などは、可能な最大限を使おう。当面のお金がある外資マンにあってNISAは、年間120万円投資できる一般NISAをまず使うといい。

 いずれにあっても、運用商品は、「内外の株式のインデックス・ファンドで手数料の安いものを半々くらいに」が正解だ。

 手数料の高いアクティブ・ファンドや債券が入っていて効率が悪いバランス・ファンド(ターゲット・イヤー型などと称するものを含む)などを選ぶのは不適切だ。確定拠出年金では明らかに不適切な商品が、あたかも地雷のようにラインナップされていることがあるので注意しよう。

自社株(ストック・オプションを含む)のリスクに注意

 外資系企業では、自社の株式の形で社員に報酬を渡す場合が多い。現在、多くは、自社株を一定の株価で買う権利であるストック・オプションの形で渡す形が多いだろうか。

 会社や役職によっては、こうした自社株に連動する収入が、収入全体の中で大きな割合を占めることがある。

 自社株については、そのリスクに特有の注意が必要だ。

 自社の業績が順調な場合はいいのだが、業績が不調に陥ると、自分のボーナスが減り、場合によっては職が危なくなり、資産である自社株を見ると株価が大きく下がっている、といった負のスパイラルにはまる公算が大きい。

 金融論的な一般論としては、自社の株価に連動する形で大きな資産を持つことはお勧めしにくい。本当は、インデックス・ファンドの形ででも報酬をくれるともっと安心なのだが、自社株資産は、なるべくこまめに換金して、別の資産に投資したい。愛社精神的には、自社の株式を持っていたいかも知れないのだが、一般論としてご注意申し上げておく。

要注意ワードは「節税」と「富裕層向け」

 外資マンは、一時的に自分が思っていた以上にお金を持つことがあり、そうした際に、資産運用を間違えることがよくある。金融系の会社に勤める外資マンでも少なくない。外資マンの運用でも、「人間のリスク」に要注意なのだ。

 典型的にまずいのは、節税を謳った、不動産やリースなどの投資案件に、よく考えると不利な条件で、しかも分不相応に多額の投資をしてしまうようなケースだ。

 外資マンは転職で収入が増えて税金を気にするようになる場合もあるし、外国と我が国の税率を比べて節税しなければ損だとの気持ちに駆られることがよくある。不動産や金融のセールスマンから見ると、「節税になります(=節税しないと損ではないですか?)」は外資マンに案件を売り込むツボになりやすい。

 また、持っているお金が数億、数十億と増えても、特別に有利な「富裕層向け」の運用機会などあるはずがないのだが(あれば金融機関が自分で使い尽くす)、富裕層向けに特別に用意された商品・サービスだという建て付けのセールスに弱い人が外資マンに限らず少なくない。

 どんな運用商品・サービスであっても、年間の実質的な手数料が運用額の0.5%以下に明確に納まっているのでない限り「全て」拒絶する、「0.5%ルール」を厳守すると、非効率的な運用商品を除外できることの他に、悪いセールスマンを遠ざける効果もあるので覚えておいてほしい。