「稼ぐ」、外資マンのキャリア・プランニング

 外資マンにとって、なんと言っても重要なのは、キャリア・プランニングだろう。いつ(どんな年齢で)、どのような仕事をして、幾ら稼ぐのか、について、常に具体的なプランを持っていて、状況の変化に対応して絶えずこのプランを修正することが重要だ。

常に転職の用意を怠るな

 外資マンには、別の会社から転職して来た中途採用者が多い。従って、「転職」には馴染みがある方が多いだろう。

 また、端的に言って「外資」とはクビ(解雇)!のある世界だ。外資系とはいえ、日本の企業は社員を簡単にクビにすることは出来ない制度なのだが、現実には、「あなたのパフォーマンスは不十分である」といった理由で、退職を迫られることが少なくない。また、本社の方針で、日本法人の一部門がいきなり閉鎖になるといった事態もあり得る。

 自分が職を探さなければいけなくなることもあれば、「もっといい職場を探そう」と思う場合もあるだろう。自分にどのような転職の機会があり、それはどのような条件なのかについて情報を収集し、具体的に想定しておくことは、外資で働く上の「たしなみ」の一つと言って良い。

 例えば、同一業界にAクラス、Bクラス、Cクラスの3つの業界内階層があって(筆者の外資マン時代の外資系証券には3つくらいの階層が明確にあった)、自分がAクラスの会社に勤めている外資マンの場合、「この会社にあと5年勤めて、保たなくなったら次はBクラスの会社には転職できるから、そこで5年、さらにCクラスの会社で5年勤めたら、国内系の会社に勤めている人の2、3倍くらいは稼ぐことが出来るだろう…」といった転職プランが想定できる。実際にこのように転職しなくとも、常にプランを持っていることが大事なのだ。

 転職で役に立つのは、同一業界他社の人脈だ。仕事の知り合い、学校を通じた知り合い、転職したかつての同僚などとの人的つながりを大切にしたい。後に独立する場合も、かつての同僚とのつながりが重要な役割を果たすことがある。

 また、率直に相談が出来るヘッドハンターの知り合いを持つことが出来ると、転職市場の情報収集の役に立つ。こちらの持つ情報を提供したり、人材を紹介したり、ギブ・アンド・テイクの関係が成り立つとよい。

40歳でセカンド・キャリアを考えよ

 高収入だが、仕事のプレッシャーがきつく、職が不安定な外資マンの場合、セカンド・キャリアを早めに考える必要がある。

 普通の日系企業に勤める人の場合、45歳くらいで、「自分が60歳以降、どのような仕事をして、いつまで働き、どのくらい稼ぎたいのか」と自問して、必要な準備を始めるといい。目下、60歳定年、65歳まで再雇用、といった条件が一般的だが、60歳になる直前になってセカンド・キャリアを考えるのでは遅い。

 セカンド・キャリアでは、転職するにせよ、独立するにせよ、(1)新しい仕事のための能力獲得と、(2)新しい仕事の顧客の獲得の2つが必要であり、十分な収入とやり甲斐のあるセカンド・キャリアを手に入れようとすると、それなりに時間が掛かる。準備が遅れると、可能性の範囲を狭くせざるを得ない。

 業種にもよるが、ハードワークの外資の場合、40歳になったらセカンド・キャリアを具体的に考えるべきだ。40歳以降は「一年一年が勝負だ」と考えるくらいで丁度良いはずだ。

 早めの退職を想定しなければならないのは精神的に辛いかも知れないが、スタートが早いほうが体力的にも余裕があるので、セカンド・キャリアで出来ることの範囲が拡がる良さもある。

 筆者の知る範囲では、外資系企業は概して社員の副業に厳しいが、副業が可能な場合は副業の形でセカンド・キャリアの準備をすると具合がいいケースがあるし、副業が出来ない場合でも、セカンド・キャリアに備えた勉強をしておくなどの準備を心がけたい。

 因みに、筆者は、外資マン時代の後も外資系的な条件で働いてきたが、セカンド・キャリアについて具体的に考えたのは42歳になる直前だった。筆者の場合は、外資系的な条件でたくさん稼ぐという方針を捨てて、時間と副業が自由になる会社に収入を下げて勤務してこれをリスクヘッジとする一方で、セカンド・キャリアにつながるようなフリーランス的な仕事を立ち上げる戦略を取った。その結果、現在は、経済評論家と楽天証券の社員を兼ねている。