12月に注目したい新興株の動き
マザーズが輝いた2020年のフィナーレですが、現時点で予想できないことと、現時点で予想できることが混同する12月になります。予想できないことはコロナですね。欧米に続いて、日本でも感染者が増加中。場合によっては、緊急事態宣言の再発動もあるかもしれない…。こうなると、巣ごもりやDX関連のネット株が多いマザーズにはポジティブなのですが、一方でワクチンの進展に期待が広がっています。英国では米ファイザーのワクチンに使用承認が下りました。もうそこまで来ている…米当局FDAの緊急使用許可など、これから大きなニュースが出る可能性があります。
これが4~10月のコロナラリーと異なる点。コロナ感染者数増とワクチン開発の進展が並走していて、「どっちが勝つのか?」が分からない状態です。とはいえ、12月でいえば、強いワクチンのニュースフローが出てくる可能性があり、その場合の市場反応「米長期金利上昇→グロース株売り/バリュー株買い」が新興株には厄介。その理由は、マザーズはグロース株だらけだから。東証1部であれば、グロース株とバリュー株が混在していて、グロース株が売られて、バリュー株が買われるリバランス(例えばネット株売り/海運株買い)自体は資金流出ではないため、指数影響はほぼ出ません。
ただ、マザーズの場合は「グロース株売り」だけが残る格好になるため、ストレートに指数下落要因となります。記憶に新しいのが、11月10日のマザーズ指数6.4%安(マザーズ指数先物にはサーキットブレーカー発動)。ファイザーのワクチン初期結果公表を受けて、米長期金利が0.96%に上昇し、これを受けて歴史的な「バリュー株買い/グロース株売り」のリバーサルが発生しました。米長期金利がまた0.9%台に上昇していますので、ワクチンのニュースフロー次第で“長期金利の一段上昇→グロース売り”の極端な動きが発生する不安があります。これが現時点で予想できない問題。ただ、ワクチンにネガティブなニュースが出た場合は、逆に「バリュー株売り/グロース株買い」で反応するはずですのでマザーズには追い風。どっちに振れるかわからない以上、心配してばかりも良くない…ここが難しいところですね。
あと、現時点で予想できることに関しては、12月特有の需給面でのマイナス要因です。まず、12月は1年で最もIPOが多い月。今年も26社(そのうちマザーズIPOが19社)が決定、17日には1日に5社が同時上場する予定になっています。年末最後の餅代稼ぎでIPOに資金を向ける投機マネー(最近はEV関連や再生エネルギー関連株の低位材料株で短期勝負しているようなマネー)は多いはず。手持ち株を売却して、IPOに資金が向かう分がありますので、その分は既存銘柄にはネガティブ。また、初値買いやセカンダリー勝負で流動性が奪われるため、流動性の低下要因になります。
もう1点。12月は売りに回る動機として、節税目的の「損出し売り」が挙げられます。手持ちに含み損の状態で持っている銘柄がある場合、年内に実現損を計上すれば利益を圧縮できます。今年は強烈なコロナラリーが発生しましたので、売却益を計上してきた投資家が例年以上に多いはず。そのため、含み損の大きい銘柄を思い切って売却する投資家が多いことを気にしておくべきでしょう。
ここで注意すべきは、現時点で今年の高値から大幅に値下がりしているような銘柄になります。さらにいえば、個人投資家が多く持っていそうな信用買い残の多い銘柄ですね。例えばですが、マザーズで信用買い残が50億円以上あり、年初来高値からの下落率が3割を超える銘柄でいえば、BASE(4477)、ジーエヌアイ(2160)、アンジェス(4563)、ロコンド(3558)、モダリス(4883)、すららネット(3998)、メドレー(4480)が挙げられます。新興株について、個別で明暗分かれそうだから「業績のいい銘柄の押し目を狙いましょう」とかよく言われますが、業績など関係なく、こうした銘柄ごとの需給状況の差が強く出るはずです。