11月の株価値上がり率ランキング

 10月後半から11月前半にかけたマザーズ市場の地合い悪化(グロース株売り地合い)が尾を引き、11月の値上がり率上位の顔ぶれは大きく変わりました。10月はマザーズの主力級であるAIinsideやJTOWER、TKP、サイバーダイン、GMO-FGなどがランクインしましたが、11月は主力級銘柄の大幅高が激減。時価総額100億円前後の超小型株だらけでした。信用買い残がたまっているマザーズ人気銘柄の需給悪が目立ちました。

 その中で、これまで人気薄だった小型株が上位にランクイン。業績や11月に人気化したテーマ(ワクチンやEV)に関連する材料株が盛り上がりました。2倍化した銘柄はジャスダックのEストアー(4304)1銘柄(※あくまで月末終値比較です)。マザーズからは2倍化した銘柄は出ませんでしたが、東証1部では日本アジアG(3751)、日本金属(5491)、東証2部ではリード(6982)、ファーマフーズ(2929)が2倍以上に。手あかの多く付いたマザーズ人気銘柄より、その他の市場で手あかが少ない材料株で短期売買…そうした傾向が鮮明でした。

市場 コード 銘柄名 月間
騰落率
11月末
終値
前月末
終値価格
時価総額
(億円)
ジャスダック 4304 Eストアー 136.3% 2,814 1,191 145
東証マザーズ 6081 アライドアーキ 93.2% 512 265 72
ジャスダック 5212 不二硝 91.0% 2,750 1,440 59
ジャスダック 6400 不二精機 87.6% 619 330 56
ジャスダック 6626 SEMITEC 85.3% 5,780 3,120 164
東証マザーズ 6255 エヌピーシー 80.2% 728 404 161
ジャスダック 3814 アルファクスFS 74.8% 1,080 618 27
東証マザーズ 3496 アズーム 74.4% 9,400 5,390 137
東証マザーズ 2150 ケアネット 71.9% 5,380 3,130 594
ジャスダック 7760 IMV 68.7% 523 310 89
ジャスダック 7577 HAPiNS 66.0% 269 162 40
東証マザーズ 7317 松屋R&D 64.0% 7,060 4,305 183
ジャスダック 6149 小田原 60.8% 3,760 2,338 240
ジャスダック 7071 アンビス 59.2% 4,720 2,965 1,063
ジャスダック 4800 オリコン 57.3% 1,306 830 198
東証マザーズ 4395 アクリート 53.2% 1,651 1,078 92
東証マザーズ 5070 ドラフト 53.0% 2,371 1,550 109
東証マザーズ 9272 ブティックス 52.9% 2,618 1,712 66
東証マザーズ 3674 オークファン 50.1% 2,140 1,426 226
ジャスダック 7217 テイン 48.5% 916 617 61

値上がり率ランキング(5銘柄)

1 Eストアー(4304・ジャスダック)

 12日に発表した中間決算をきっかけに急騰。マザーズのEC関連銘柄が苦しむなかで、ジャスダックの低流動性銘柄だった同社株が異彩を放ちました。手あかが少ない銘柄で、流動性が低く、超小型(中間決算を発表する直前の時価総額は60億円台)…そんな銘柄に、短期資金が流れることで需給ギャップが発生したといえます。

 なお、12日発表の中間決算は、売上高がM&A(買収や合併)効果もあって前年同期比2.1倍、営業利益が62%増と大幅増収増益。巣ごもり消費によるEC拡大の波に乗ったのは、他の関連銘柄と同様です(マザーズのEC関連株は好決算でも出尽くし売りになるケースが目立つなか…)。なお、通期の予想に対する進捗率は、中間期の段階で営業利益は94%に到達。通期予想は据え置かれていますが、大幅な上方修正の発表がこの先出ることは濃厚といえそうです。

2 アライドアーキテクツ(6081・東証マザーズ)

 超小型の低位株、これまで人気薄だったこともあって、業績材料をきっかけに急騰。11月の月間値上がり率でマザーズトップでした。13日に今2020年12月期の業績予想の上方修正を発表。売上高は計画未達(コロナ影響で国内外の広告需要が減少)ながら、営業利益は1.0億円→2.3億円へ大幅に増額しました。

 前期まで赤字が続いていたこともあって、変化度合いが大きいと好意的に捉えられたのかもしれません。株価が急騰したタイミングで信用買い残も急増(上方修正の発表前80万株程度→11月27日時点で158万株)。業績を理由に買い上がった投資家のメインは、個人の信用組と推測できます。

3 不二硝子(5212・ジャスダック)

 米ファイザーが開発する新型コロナ感染症ワクチンについて9日、治験で感染防止の有効性が90%を超えたとする暫定結果を発表。ワクチン期待のブル相場に火が付いたわけですが、個別株物色でもワクチン関連株は大盛り上がりに。

 ワクチンの容器に使用するガラス容器を手掛けることで関連株として人気化。18日に付けた高値は4,100円と、前月比で一時2.8倍になる場面も。材料株、恐るべし。

4 不二精機(6400・ジャスダック)

 不二硝子と同じく、ワクチン関連銘柄として人気化。社名に「不二」と付くことにしても、時価総額にしてもよく似ています。不二硝子とセットで知名度を上げました。値動きの軽い材料株として短期資金が殺到。売買のメインは個人投資家で、信用買いが中心です。25日に信用規制がかかると、一旦急落と毎度のパターンに。ただ、ワクチンのグッドニュースが出るとまた材料視され…しばらくネタには尽きないのでしょうか。

5 エヌピーシー(6255・東証マザーズ)

 11月の最大イベント“米大統領選”を材料にして急騰に成功した再生エネルギー関連の低位株でした。大統領選挙でバイデン前副大統領が勝利を確実としたことで、バイデン氏が掲げてきた環境政策の強化への思惑が浮上。環境政策として、充電基地を新たに建設しながら雇用も創出するという考えを示したことも追い風となりました。

 同社のほか、再生エネルギー関連としてはジャスダックのウエストHDも人気化。また、同業でいえば東証1部のアルバックも材料にはされたのですが…低位株による手掛けやすさでエヌピーシーに軍配。