住宅ローンを残したリタイアは「退職金の蒸発」を招く

 住宅ローンをリタイア年齢(できれば正社員として働ける年齢)までに完済し終えることができない場合、残りのローン残高をどうするかという問題が生じます。

 基本的には定年退職年齢を超えて働いた場合、継続雇用の給与収入は下がるため、住宅ローンの返済に支障が出ます。そこで定年退職時に受け取った退職金を相殺する格好で、住宅ローンを完済することが多くあります。

 しかし、これは極めて危険な対応です。例えば、退職金の半分が住宅ローン完済のために消えたとします。本来は、その後の20~30年にかけて取り崩して用いるべき貴重な「老後の軍資金」です。つまり、あなたの老後の資金繰りは一気に暗転した、ということになります。せめて4分の1減ならいいのですが、いずれにせよ老後生活の予算は下方修正を余儀なくされることになります。

 また、退職金が見込み通りもらえなかった場合は、さらに苦しい状態に追い込まれます。前述の新聞記事では退職金が満足に出ず(倒産だったのか、制度がないことを知らなかったのかは不明)、高齢期も働き続けながらローン返済に悪戦苦闘し、どうしようもなくなったので売却も視野に入れるような事例も紹介されています。

 基本的には、「定年退職年齢(正社員を辞める年)=住宅ローンの完済年齢」と考えてローンは設定するべきです。