住宅ローンの早期返済は「金利を払わないという運用」でもあるが残しては仕方がない

 運用として住宅ローンを見た場合、今の超低金利環境は私たちにとってかなり有利です。

 本記事の読者のように資産運用について理解のある方にとっては「今の住宅ローン金利であれば、これを無理に早期返済する必要はないのでは」という意見もあるでしょう。「いっそ、早期返済はせずに期待リターン3~4%程度の運用に回したほうがいいのでは」という考え方です。

 確かに、現在の住宅ローンはきわめて異常な低金利環境で設定できます。過去のローン金利の推移も住宅金融支援機構のウェブサイトに公開されていますが、平成15年ごろだと固定金利で年3.5%くらいの設定で住宅ローンを組んでいたことになります。

 仮に3,000万円のローンを35年、年利3.5%で組んだ場合、総返済額は実に5,210万円になります。これが年1.0%で設定できると総返済額が3,560万円になりますので、この差は圧倒的です。

 低い固定金利でローンを設定することは、有利な取引であることは間違いないのですが、「だから返済を早める必要はない」とするリスクは心に留めておく必要があります。

 結果として定年退職年齢は65歳ないし70歳程度でとどまり、ローンの残高を残すことは「同額以上の資産形成を投資で実現しなければ、結局退職金をなくすことになる」からです。

 投資に不確実性があることも考えると、つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の拠出枠を使い切ったら、投資についてはそれ以上あまり高望みせず、ローンの返済に余力を向けるほうがいいのではないかと思います。

 最後は、あなたの判断になりますが、行動ファイナンスでいうところの「オーバーコンフィデンス(自信過剰)」があなたの投資成績を過大評価しないようにしたいところです。