かつてない厳しさの宿泊・飲食サービス業

 宿泊業の場合、宿泊先への移動やホテル・旅館が調達する食材やクリーニング等の各種サービス、お土産を扱う小売店やそれを製造するメーカー等、波及する業種が多いという特徴があります。

 宿泊業の需要を喚起することで、宿泊業だけでなく、他の業種を支える。特に、観光が主要産業の地域では、宿泊業の経営が深刻になると地場の産業が総崩れになる恐れがあるため、経済活動を少しでも復調させる必要があるという事情もあります。

 宿泊・飲食サービスの業況を日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(日銀短観、2020年9月調査)で確認してみましょう。

▼業況判断D.I.の推移(全規模)

(出所)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より筆者作成。

 2005年からの推移を見ると、宿泊・飲食サービス(全規模)の業況判断D.I.(業況が「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を引いた値)は、リーマンショックで大きく落ち込んだ後、一時回復基調になり、東日本大震災で再び大きく悪化。

 V字回復の後、近年では業況判断D.I.がゼロの周辺にいましたが、コロナ禍で急落。6月調査の▲91を底に、9月調査では▲87と少し回復しましたが、まだまだリーマンショック時よりも厳しい状況が続いています。

 宿泊・飲食サービスのほかには、対個人サービスも厳しい状況です。対個人サービスには、塾やフィットネスクラブ、カラオケボックス、映画館や遊園地などさまざまな業態が含まれています。

 まだまだ、3密回避やソーシャルディスタンスを意識せざるを得ないですし、企業側も対応コストがかさみます。