「中抜き」の透明性と小ささ

 上場株式への株式投資の長所として、取引価格が明確であるため、自分が支払う、あるいは受け取る(売りの場合)金額が、フェアな市場価格から幾ら離れた物であるか、即ち「中抜き」が幾らであるかが、透明であることが指摘出来る。即ち、委託売買手数料、税金共に、幾ら掛かるのかが明確だ。

 この点、店頭取引が中心の社債などの債券は、外国債券を含めて、末端の投資家は市場価格が分からず、従って証券会社にどれだけ価格差を抜かれているのかが分からない。まして、「仕組み債券」のような複雑な商品は、「幾ら抜いているかが分かりにくいように」仕組みを複雑にして実質的な手数料を条件に潜り込ませている。「損得を正確に計算して判断せよ」と言うよりは「客側に損なように作られているに決まっているのだから近づかない方がいい」とアドバイスすることの方がより現実的だろう。同様に、実質的「中抜き」が分からない(しかも大きい!)商品として近づかない方がいいものに個人年金保険を含む生命保険がある。

 この点、上場株式に投資する行為の透明性は高い。これは、個別株式への投資にあってもっと強調されてもいい長所だと思う。

 また、ネット証券の社員である筆者としては手前味噌で気が引けるが、日本に於ける株式委託売買手数料の自由化、ネット証券の登場、激しい手数料引き下げ競争によって、今や手数料がごく安い水準になったことも強調しておきたい。

 ETF(上場投資信託)と競うとなると大変だが、普通の投資信託との比較を考えると、十数銘柄以上の分散投資ができるなら、ポートフォリオの作り方さえ分かっていれば、個別株投資はリターン・リスク・コストの点で十分競争力があると思う。もちろん、銘柄選択やウェイトの調整を高級なゲームとして楽しむことの出来る向きには、是非お勧めしたい。