ホワイトハウス、ワシントンの感染拡大リスク

 トランプ大統領の症状だけでなく、さらに懸念材料があります。ホワイトハウスの関係者やワシントンの政治家の感染者が増えていることです。

 ほぼすべての共和党上院議員は毎週3回ランチミーティングを行っていましたが、その参加者ですでに陽性が判明していることから共和党上院議員の感染者拡大が懸念されています。

 また、9月26日にホワイトハウス内のローズガーデンで催された最高裁判事を指名する式典参加者で多くの陽性者が判明しました。上院議員以外にも多くの政府関係者へ感染拡大する懸念がくすぶっていましたが、6日現在で15人のホワイトハウス関係者の感染が確認されています。

 このようにホワイトハウス関係者の感染拡大リスク、ワシントンの政治家感染拡大リスクは沈静化しておらず、むしろ今後の懸念材料として、くすぶっています。

 バイデン氏にも同じようなリスクは残ります。トランプ大統領感染後の世論調査ではバイデン氏のリードが広がっている状況ですが、バイデン氏も陽性となれば、大統領選そのものの不透明感が強まり、マーケットは大混乱となります。バイデン氏はこれまで検査を2回受けて、2回とも陰性とのことですが、現時点で陰性だから安心というわけではありません。リスクシナリオとしてはさまざまなシナリオを想定しておく必要があります。そして、ホワイトハウス、ワシントンの感染拡大リスクがくすぶっている限り、ドル/円の上値は限定的と見ておいた方がよさそうです。

 今週7日には副大統領候補の討論会が開催されます(日本時間8日午前10時)。トランプ大統領の感染によって、トランプ氏が勝っても、バイデン氏が勝っても、もしもの場合の、継承第2順位の副大統領の資質について、より注目度が高まってきました。もし、民主党副大統領候補のハリス氏が劣勢になれば、バイデン氏リードに影響してくる可能性が出てくるからです。

 景気回復のピッチが鈍化してきている中で、政局の不透明感はマーケットにとってマイナス要因です。このような状況の中で追加経済対策の早期合意が光明の一筋でしたが、6日、トランプ大統領はツイッターで、「大統領選後まで追加経済対策の協議を中止するように交渉担当者に伝えた」と発信すると、200ドル超上げていたNYダウ平均株価は急落し、一時400ドルを超える下げとなりました。この株急落を受けてクロス円も急落し、ドル/円も若干下がりました。パウエル議長が講演で、追加の財政出動を求めた矢先であったため、失望感も大きかったようです。トランプ大統領のツイートは、民主党を揺さぶる戦術だけであればいいのですが、今後の民主党の動きに注目です。