本当にトランプ大統領はコロナに勝ったのか?

 3月にコロナに感染したジョンソン英首相の回復期間を参考に見ると、3月27日の陽性判明から9日目の4月5日に入院後、10日目の4月6日に集中治療室で酸素を吸引し、退院したのは16日目の4月12日でした。

 つまり、入院してから7日目に退院したことになります。トランプ大統領の場合は英首相よりも高齢ということもあり、10月2日の感染判明後の朝、すぐに入院し、3日目の10月5日に退院しました。

 4月の英首相は退院まで7日かかりましたが、その後の治療薬の改善によって、10月の入院では3日で退院できたのではないか、あるいは陽性判明後すぐに入院し、軽症であったため短期間で退院できたのではないかと見方はさまざまあります。しかし、軽症であっても、ジョンソン首相よりも18歳年上であるため、完全回復には時間がかかるかもしれません。

 ジョンソン首相は、結局、職務復帰まで約1カ月かかっています。そのことを考えると、トランプ大統領が入院前と同じような職務をすぐに遂行するのは無理がありそうです。医師団は、5日のトランプ大統領の退院後、記者会見で「完全には危機から脱していないかもしれない。24時間管理する必要がある」と述べ、「飛行機などの移動では、まだ様子を見る必要がある」と説明しています。

 退院後の体力回復を考慮すると、無理をして15日の第2回目討論会に臨むよりも、22日の第3回目に照準を合わせるか、大統領選挙投票日の11月3日の数日前に完全回復を力強く宣言し、コロナ対策に尽力する声明を発した方が選挙戦で有利に働くかもしれません。

 もし、症状がぶり返せば、投票日当日に入院しているという最悪のケースも考えられます。

 参考までに、トランプ大統領の職務が不可能となった場合、大統領継承法の規定によって大統領職務を引き継ぐ順位は、第2位がペンス米副大統領、第3位が民主党のぺロシ米下院議長となっています。もし、ペンス副大統領も陽性となって入院し、ぺロシ議長が継承となれば、政局は大混乱必至となります。シナリオを想定する上でも、この大統領職務継承順位は留意しておく必要があります。ちなみに、第4位はポンペオ米国務長官、第5位はムニューシン米財務長官となっています。