日本は経済対策と同時に将来展望を描けるか

 日本と米国を比較すると、このコロナ禍で成長した企業や存在感を発揮した企業が少ない点が課題です。

 インフラを除けば、テレワークを支える企業はほとんどが海外企業。これまで使ってきたOSやアプリだけではなく、Zoomの急成長が印象的な事例でしょう。環境が変化した際に、伸びる企業が少ないことが課題です。

 日本は貸出中心の金融制度なので、どうしても、リスクの高いビジネスへの資金供給は苦手。そのため、新しいビジネスを立ち上げることが難しいという面があります。

 また、資金に余裕のある大企業が社内ベンチャーを立ち上げようとしても、大企業目線の売り上げ目標が設定され、ロットの小さいビジネスに参入したがらないという問題もあります。

 総じて言えば、「新しいものを創るよりも、今あるものを良くしていく」、というのが日本企業の基本戦略になるのですが、そのためには、安定した経済環境・雇用環境が欠かせません。

 コロナ禍でも失業率は3.0%(8月)と低い水準ですが、その企業では有用だが他の企業では有用性が限られるスキル(企業特殊的スキル)を蓄積する傾向が強く、平時でも、転職後に伸び悩むという事例はよく聞くところです。

 その一方で、リーマン・ショック時に大量のゾンビ企業を生み出したと批判された中小企業金融円滑化法が事実上、復活。不採算企業が存続し続けることで、生産設備や労働力といった資源の配分において、現状維持の傾向が強くなっています。

 何事もバランスですが、原則的には禁じ手だった、保証付融資を既存の債務返済にあてる旧債振替が公然と行われるなど、何が何でも企業を延命しようとし過ぎているきらいがあります。

 延命された企業の「隠れ不良債権」はどこかのタイミングで顕現化し、信用コストとなって銀行等の経営を圧迫します。銀行側としても、顧客から預金を預かっている以上、放漫経営は許されず、信用コストが増加すれば、融資スタンスは硬化します。

 10月1日に公表された日銀短観(9月調査)では、今のところ、資金繰り判断や金融機関の貸出態度判断は企業金融に変調がないことを示していますが、保証付融資の枠を使いきってしまえば、追加の融資を受けることは一気に難しくなります。

 また、この局面を乗り切っても、据置期間が経過すると金融機関への返済額が増えて資金繰りを圧迫するので、楽観はできません。

 菅政権の誕生で、地銀再編が加速すると目されています。11月には独占禁止法の特例法が施行され、地方経済が騒がしくなりそうです。

 冬のボーナスも減少するので、消費の下振れ懸念もあります。金融一本槍では企業収益の回復も、成長期待も限られます。

 足元の経済対策と将来展望をどうバランスさせるか、菅政権の施策に注目です。