リスクは、米国の大統領選挙

 次いで、ダウンサイド・リスクを見ていきましょう。

 注目はやはり、米国の大統領選挙。ひと月後の11月3日に迫っています。9月30日の大統領選討論会を受けて、民主党のバイデン候補がリード。さらに、トランプ大統領が病床にあるため、選挙戦略に影響が出ています(なお、退院は早ければ月曜日のようです)。

 今のところ、トランプ大統領が不利な状況ですが、快復時期やその後の選挙戦略、そして、財政刺激策が可決できるかどうかで、まだまだ、どちらが勝つかは分かりません。

 新型コロナ再拡大が懸念される中での投票ということになれば、開票の遅れやどちらが勝っても集計作業への疑義から混乱が生じる可能性がある点は留意しておいた方が良さそうです。

 トランプ大統領が勝利した場合、これまでの政策と連続性があるので、株価への影響は限定的と見られますが、他方、バイデン候補が勝利した場合は株価に調整が入りそうです。

 なぜなら、バイデン候補の基本政策は再分配重視。富裕層の税率を上げ、低所得者層への社会保障を手厚くする方針だからです。

 富裕層のキャピタルゲイン課税は、現行の20%から39.6%まで引き上げる計画。これほどの増税、しかも、現在の高めで推移している株価を考えれば、税制が変更される前に売却する富裕層も出てくるでしょう。

 売り圧力が強まれば、当然ながら、株価は下がります。

 米国の場合、機関投資家の層が厚く、確定拠出年金による需要が支えになるので、吸収余地は大きいと思いますが、リスク要因であることには変わりありません。

 トランプ減税がどれだけ実体経済を押し上げたかは議論が分かれるところですし、むしろ、再分配を重視して、低所得者層の底上げをした方が消費の拡大に繋がり、教育機会の拡大等を通じた人的資本の蓄積で生産も増加するように思いますが、そうした効果(特に生産への影響)が出るのは長い時間がかかります。

 短期的には、バイデン大統領誕生の方が株価にはマイナスでしょう。