NYダウ一段安のシナリオ回避、一段高も期待できる?

 また、先週の値動きは今後の相場の動きを考えていく上で、大きなヒントが隠されているかもしれません。

 とりわけ注目されるのは、前半の上昇局面です。上昇のきっかけとなったのは、遅れている米国の追加経済政策の成立に向けて、民主・共和両党で協議が続き、進展への期待が高まったことです。9月の米株下落の主な要因として挙げられるのが、新型コロナウイルスの感染拡大懸念と、この追加経済政策成立の遅れでしたので、その片方の不安が後退した格好です。

 実際に、NYダウ平均株価の動きを見ると、75日移動平均線の攻防から上方向に反発し、25日移動平均線水準まで株価を戻してきました(下の図2)。

■(図2)NYダウ(日足)の動き(2020年10月2日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 さらに、直近高値を結んだラインも上抜けている他、週末のトランプ氏のコロナウイルス感染を受けても、今のところ下げが限定的にとどまっていることを見ると、前回のレポートでも指摘した「過熱感の修正から見通しシナリオの修正へと進んで株価が一段安」というシナリオはひとまず回避され、経済政策の成立に向けてさらに進展があれば一段高も期待できる状況です。

 とはいえ、油断はできない状況に変わりはなく、トランプ氏のコロナウイルス感染によって、米国の政治面はかなり不透明となりました。選挙戦のスケジュールや勝敗予想行方は、今後のトランプ氏の容体や行動・発言次第で様々な展開が想定される他、先ほどの追加経済政策の成立も影響を受けるかもしれません。政治面の材料は市場が先回りして織り込みにくく、市場のムードも変化しやすいため、その動向には注意です。