次の米大統領は最高裁が決める!?

 おととい、9月29日に1回目米大統領選のテレビ討論会が行われた。

トランプ)ジョー、お前の党は社会主義に走ろうとしているぞ! お前の息子は薬物使用で軍を除隊になった。

バイデン)いいかげんに黙らないか。せいぜいほえ続ければいいさ…。

 まるで、プロレスのマイクパフォーマンスのようなバイデンとトランプの非難の応酬で、「史上最悪の討論会」などと言われているが、テレビ討論会を退屈な予定調和にせずに、大衆受けするエンターテインメントをやろうとトランプは考えているのだろう。バイデンの話は中身がなく、トランプの話はわかりやすい。

 メディアが非難するほど、米国の大衆は引いていない。米国人はプロレスが大好きなのである。トランプの魅力はケンカ腰のファイティングスピリットだ。トランプは意識的に支持者受けするヒール(悪役レスラー)をやっている。

 今回の討論会では「場外乱闘」があった。司会のウォレス(右派のFOXテレビのアンカーだが民主党員)は、バイデンに対して、「サンダースやオカシオ・コルテスなどの社会主義的な経済政策やアンティファなどの暴動を支持するのかどうか?」という問いを何度も投げかけたのだ。そして、バイデンはそれらの急進的なリベラルを支持しておらず、距離を置いているという姿勢が明らかになった。サンダースを支持する民主党左派の支持者は、「軍産複合体」のかいらいであるバイデンを支持しないであろう。

 米国のリベラルは結果的に軍産に取り込まれ、そのかいらいになってしまっている。軍産がかついでいるバイデン陣営はメディアを支配しているので、NYタイムズ等のメディアを使ってトランプの税金問題を討論会の直前に出してきた。しかし、トランプ支持者にとっては納税問題などどうでもいいことである。トランプよりバイデンやハリスのほうが稼いでいるということだろう。しかし、一回目の討論会は「納税問題」の弁明に追われたトランプがやや不利に映る展開となっている。

 いずれにせよ、今回の誹謗中傷、妨害、ののしりあいに終始した米大統領選のテレビ討論会は、「南北問題2.0」と呼ばれる米国社会の分断をより鮮明にする結果となった。

 米大統領選の結末について運用者や政治評論家に聞いても、だれもが予測不可能だと述べている。米国の大統領はトランプの言うように、「最高裁」が決めることになるかもしれない。

 メディアでは株式市場の先行きについて楽観的な報道がされているが、大統領年去年のシーズナリー・サイクルを見ると、9月同様に10月の相場も下げ基調になりやすい。

 以前よりレポートやラジオ番組で「秋相場には注意が必要」とコメントをしていたが、ボラティリティの大きな動きは来月にかけても続く可能性がありそうだ。グッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナード氏は10月にかけてもリスク資産の下げが継続するとして、「リスク資産の後退は季節的な要因によるものである。10月にはさらなるダウンサイドが予想されるだろう。テクニカルもさらなる下げを示唆している」と、ツイートした。

スコット・マイナードのツイート

出所:ツイッター

 マイナード氏によると、この調整はあくまで季節的なものであり、時期を過ぎれば金融緩和の継続により資産価格のバブルも継続するとの見通しを示している。

 バイデンが大統領になることをリスクだと感じている米国の企業幹部たちは、自分の持ち株の売却に動いているという。誰の目にも明らかな米国の分断と政治的混乱によって、10月の相場は急落や乱高下といった波乱含みの相場展開を想定しておくべきだろう。

米大統領選挙年のNYダウのサイクル

出所:エクイティクロック

 今回の米大統領選は米国の未来を決すると同時に、歴史上最悪のイベントリスクでもある。今後4~5週間はボラティリティが高い困難な取引環境となるだろう。にもかかわらず、市場参加者のエクスポージャーは上昇したままである。ボラティリティが高いままで、市場がかなりトレンドレスのままであれば、これらのエクスポージャーは来月に落ちる可能性が高い。

 筆者は、先週、ポートフォリオのなかで、市場の価格変動のリスクにさらされている資産の割合をチェックし、先週はエクスポージャー(市場の価格変動リスクや特定のリスクにさらされている金額や残高)を減らす作業を行っていた。

 ラリー・ウィリアムズは、「マネーマネジメントとは、トレードにおいて最も重要なルールである。トレンドや価格ももちろん重要だが、自分の資金をどう扱うべきかを分かっているかどうかは最も大切なことである」と述べている。

 備えあれば、憂いなし。破産しないで運用を続けるには、大きなイベントの前には、<リスクの大きいポジション>をなるべく持たないことである。