この調整は過熱の修正?それともシナリオの修正?

 実は、S&P500やNASDAQなど、他の米主要株価指数も75日移動平均線の攻防となっているため、ここで踏みとどまれるかが最大の焦点になります。図4のNYダウで見れば、直近高値を結んだラインや、25日移動平均線まで株価を戻すことができれば安心感が広がり、最近までの株価下落が、いわゆる「健全な調整」として認知され、さらに株価も戻していきやすくなると思われます。

 もっとも、相場における調整とは、「行き過ぎた株価を修正する動き」ですので、わざわざ「健全」という言葉をつけなくても、調整自体が健全な相場局面です。いきなり屁理屈をこねてしまいましたが、ここで言いたかったのは、今回の「調整」について整理する必要があるからです。

 現時点で認知されている調整は、「過熱感の修正」です。特にNASDAQの下げがキツかったのも、「8月以降のFANG銘柄をはじめとする銘柄の株価上昇が急ピッチだったから」というリクツです。過熱感の修正であれば、値幅的にも日柄的にも75日移動平均線あたりで株価が下げ止まりそうというわけです。

 しかし、足元の調整が「今描かれているシナリオの修正」まで発展すれば、株価はもう一段下落する、もしくはもみ合いが長引く可能性が出てきます。

 直近の米株下落の要因として、(1)新型コロナウイルス感染者の再拡大懸念や、(2)米追加経済政策の成立が遅れていること、(3)大手金融機関をめぐるマネーロンダリング疑惑が報じられたこと、(4)本格的な米大統領選挙戦を前に利益確定売りが出たこと、(5)米中対立の不透明感などが挙げられますが、(3)以外の項目については特に目新しいものではありません。

 想定の範囲内であれば、市場は材料の織り込みや切り替えが比較的早くなるはずですが、今のところは株価の本格回復のきっかけがつかめていない状況です。