2.顧客の保持力

 同社は、最初は基本的な業務サービスを銀行側と契約し、その後、データ分析など利用できるサービスの領域を拡大させることで、顧客あたりの売上を拡大させる戦略を取っています。

 2020年のサブスクリプションのリテンションレート(前年度の1月31日時点でサービスを購入した顧客からの本年度の総サブスクリプション収入を、前年度の総サブスクリプション収入に対する割合で表したもの)は147%と高水準で、サブスクリプションのサービスを順調にアップグレードさせているように見えます。

3.事業の効率性

 同社はまだ赤字ですが、売上に対する比率でみると、コストの改善傾向が確認できます。粗利益率は2018年の47.6%から、2020年の53.6%に上昇。営業費率は79.9%から74.0%に改善しています。

 サブスクリプション事業の粗利益率は7割程度ありますので、同事業が拡大するほどミックスが改善して、今後も、粗利益率は上昇していくとみています。営業費率の高さが気になるところですが、市場自体が拡大している局面とみられますので、売上の成長率が重要な時期と考えています。

エヌシーノの粗利益、営業費、営業損益の推移(単位:千ドル)

出所:会社資料より楽天証券作成
注:各年度末は1月末

 顧客の銀行側の環境は思わしくなく、コロナ・ショックによる倒産や金利低下などの問題を抱えています。しかし、業務の効率化を進める流れは変わらないと考えられます。競合やスタートアップがデジタル化を進めて、サービスのスピードを改善しているとなれば、生き残るために、導入せざるをえない面があります。

 また、コロナ・ショックの影響で、信頼度の高い大手の銀行に回帰する流れが出てきているようです。このような面では、経済や社会の不安定さは、伝統的な銀行にとってプラスの材料ともいえます。