「コロナ後」の進化は何だろうか?

 さて、アンドリュー・W・ローが賛成あるいは満足するかは全く定かではないし、正しい応用なのかどうか、筆者に全く自信はないのだが、現在、世界的に新型コロナウイルスの感染症が問題な2020年の夏なので、「適応的市場仮説」を、いささか乱暴だが、「アフター・コロナ」のマーケットに想像される状況に対して応用してみよう。

 まず、目下の「ウィズ・コロナ」の株式市場を巡る「環境」は、コロナによる実物経済へのマイナス効果(国によって異なるが2020年の先進国は5〜10%のGDPのマイナス成長が予想されている)と、先進各国のリーマン・ショック後を超える規模とスピードの金融政策・財政政策の効果が、お互いに引っ張り合って、現在の株価を形成している。

 この状況で、経済が多分「まだら模様」であろうが、経済がコロナに適応し始めると何が起こるだろうか。

 国によって差はあるだろうが、苦境下の業種・企業・個人が多数いる以上、金融緩和を中心とする経済対策は、急に引っ込めることができにくいだろう。

 そうなると、潤沢な資金が、相対的に有望なビジネスや株式への投資に向かいやすくなるので、場合によっては「バブル」的な株価の高騰が起こる可能性がある。

 そうなった場合、投資家の「思考」にはどのような進化論的選別の効果が働くだろうか。

 米国の投資家で言うと、(1)株式投資は長期的に高いリターンを実現していて(2)ネットバブル崩壊後も、(3)リーマン・ショックの後も、さらに(4)コロナの後も「うまくいった」、という経験が蓄積される。

 こうなった時に、「株式への長期投資は『必ず』うまくいく」という“信念”が形成される可能性があるのではないだろうか。

 その信念の株式市場への影響は「リスク・プレミアム」の縮小だろう。

 どのくらいの期間を「長期」と呼ぶべきなのかは意見の分かれるところだが、「長期の株式投資がうまくいかない時代」が将来の米国にも訪れる可能性は、適応的市場仮説的には十分あると言うべきだろう。

「株式は長期な投資なら絶対にもうかるのだ」とみんなが信じるようになると、株価がいくら高くても株式を買っていいと思うようになるはずだ。つまり、企業の将来の状況を一定とするとリスク・プレミアムが縮小する。リスク・プレミアムが縮小すると、株式投資はもうかりにくくなるし、株式投資に対する潜在的リスクがおそらくは拡大する。

 もっとも、今述べたストーリーは、多くの仮説の積み重ねだし、そもそも株式投資がもうかりにくくなる手前には「バブル!」が来るのだから、現時点で株式の長期停滞を心配するのは「全く早過ぎる」ことを付記しておく。