インデックス・ファンドとの関係に関する補足

 少々、余談を挟む。

 過去30年くらいのファイナンスの本の多くは、「効率的市場仮説」を偉そうな権威を代表する敵役に仕立てて、「現実の市場は、そのようなものではないのだよ!」という立場で書かれることが多かったが、本書も例外ではない。

 説明が丁寧なので役に立つのだが、今や、効率的市場仮説をそのまま信じている人はいないだろうから、この理論をいつまでも敵役にしておくのは、少々気の毒だしマンネリ気味な気がしなくもない。

 なお、インデックス運用の有効性は効率的市場仮説と結びつけて語られることが多く、この本の著者も、効率的市場仮説はインデックス運用を推している、という文脈を少々使っている。しかし、インデックス運用のアクティブ運用に対する優位性は、(1)運用ゲームではライバルの平均を持つことが有利だという単純で強力な原則と、(2)取引コストや運用手数料・販売手数料は運用パフォーマンスにとって不利だという運用業界には不都合だがこちらも強力な原則に支えられているので、効率的市場仮説が正しいか否かとは無関係に成立する話なのである。

 インデックス・ファンドにも欠点はあるのだが、「適応的市場仮説」が成立するからといって、アクティブ運用が有利になるわけではないので、インデックス投資家も安心して本書を読んでほしい。