上値トライの意欲減退、3つの兆し

 ただし、足元の状況をみると、上値トライの意欲が夏場の食欲と同様に減退しつつある兆しがいくつか見られている点には注意が必要です。

 最初の兆しは値動きの範囲です。再び図1に視点を戻すと、チャートの形状からはふたつのもみ合いレンジが想定できます。ひとつめは、これまでにも紹介した6月9~10日の高値を結んだ上値ブレイクラインと、6月15日安値と7月31日の直近安値を結んだラインによる範囲です。この範囲から想定される値動きはこれまでとあまり変わりません。

 そしてもうひとつのレンジが、「ペナントボックス」を下放れたことによる下値を切り下げる線と直近の上値を切り下げる線によって構成される下向きの範囲です。25日移動平均線を早期に回復できないと、弱含みへの意識が強まってしまいそうです。

 続いての兆しは、日経平均株価水準とPER(株価収益率)です。

 先週末8月7日(金)の日経平均のPERは20.18倍で、20倍を超えてきました。前週末の7月31日(金)が17.90倍、さらに前の週末7月22日(水)も同じ17.90倍となっていました。それぞれの時点の日経平均は2万2,329円、2万1,710円、2万2,751円でした。

 つまり、株価の方向感が横ばいの中でPERが上昇しているわけですが、その理由は企業業績です。足元は国内企業の決算ラッシュで、先週も約1,300銘柄の決算発表がありました。PERは「株価÷EPS(1株あたり利益)」で計算されますが、さえない決算でEPSが減少すればPERの値が大きくなります。そのため、2万2,000円台という同じ株価水準でも、PERという「企業の稼ぐチカラ」から見れば割安とは言えなくなってきました。企業の稼ぐチカラへの期待と評価は株価上昇の原動力です。