日経平均は2万2,000円台回復。2万2,500円あたりからの上値は重い

 遅めの梅雨明けと同時に8月相場入りとなった先週の国内株市場ですが、週末8月7日(金)の日経平均終値は2万2,329円となりました。前週末終値(2万1,710円)からは619円高、週足ベースでも再び上昇に転じ、2万2,000円台を回復させたことになります。

 まずはいつもの通り、日足チャートで足元の状況から確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2020年8月7日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて、先週の日経平均の値動きを振り返ってみますと、前週末まで6日続落だったこともあり、週初の3日(月)と4日(火)に勢いよく反発しました。移動平均線との絡みでは、3日(月)に200日、4日(火)に25日の移動平均線を上抜け、取引時間中には2万2,603円まで上昇する場面もありました。

 ただし、その後は週末にかけて失速し、再び25日移動平均線を下回っての推移となりました。相変わらず2万2,500円あたりからの上値は重たいものの、早い段階で2万2,000円台に戻すことができたのは好材料です。

26週移動平均線がもうすぐ上向きに?

 続いて、週足チャートでも確認します。

■(図2)日経平均(週足)の動き(2020年8月7日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 移動平均線の傾きを見ると、13週線と52週線が上向き、26週線が下向きになっています。

 26週間前と言えば2月14日あたりで、いわゆる「コロナ・ショック」で株価が急落に差し掛かったところです。このままいけば、もうすぐ計算期間から急落時が外れることとなり、26週移動平均線が上向きになる可能性があります。その際に13週と52週線の基調も維持できていれば、短期(3カ月)・中期(半年)・長期(1年)のすべてが右肩上がりとなります。となると、6月半ばから続いてきた2万2,000円台を中心とするもみ合いが、良い方向へ動き出しそうな期待も感じられます。

上値トライの意欲減退、3つの兆し

 ただし、足元の状況をみると、上値トライの意欲が夏場の食欲と同様に減退しつつある兆しがいくつか見られている点には注意が必要です。

 最初の兆しは値動きの範囲です。再び図1に視点を戻すと、チャートの形状からはふたつのもみ合いレンジが想定できます。ひとつめは、これまでにも紹介した6月9~10日の高値を結んだ上値ブレイクラインと、6月15日安値と7月31日の直近安値を結んだラインによる範囲です。この範囲から想定される値動きはこれまでとあまり変わりません。

 そしてもうひとつのレンジが、「ペナントボックス」を下放れたことによる下値を切り下げる線と直近の上値を切り下げる線によって構成される下向きの範囲です。25日移動平均線を早期に回復できないと、弱含みへの意識が強まってしまいそうです。

 続いての兆しは、日経平均株価水準とPER(株価収益率)です。

 先週末8月7日(金)の日経平均のPERは20.18倍で、20倍を超えてきました。前週末の7月31日(金)が17.90倍、さらに前の週末7月22日(水)も同じ17.90倍となっていました。それぞれの時点の日経平均は2万2,329円、2万1,710円、2万2,751円でした。

 つまり、株価の方向感が横ばいの中でPERが上昇しているわけですが、その理由は企業業績です。足元は国内企業の決算ラッシュで、先週も約1,300銘柄の決算発表がありました。PERは「株価÷EPS(1株あたり利益)」で計算されますが、さえない決算でEPSが減少すればPERの値が大きくなります。そのため、2万2,000円台という同じ株価水準でも、PERという「企業の稼ぐチカラ」から見れば割安とは言えなくなってきました。企業の稼ぐチカラへの期待と評価は株価上昇の原動力です。

 そして、3つめの兆しは為替市場です。前回のレポートでも「円高への下振れに注意」と述べました。

 先週のドル/円はおおむね105円台での推移が続き、時折106円台にタッチするという展開でしたが、まだコアレンジである106~108円台への本格的な回復には至っていません。

 106円台への接近もしくはさらなる円安となれば、日経平均の上値余地は2万3,000円台ぐらいまで増えそうですが、実は、週足チャートで長期のドル/円の推移を見ると、105円割れとなった場面で株価の下落が重なることが多いことが分かります(下の図3)。

■(図3)日経平均と米ドル/日本円のチャート(週足)(2020年8月7日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 最近の日経平均は為替の動きの影響を受けやすくなっていますが、今回も105円の水準が節目として強く意識されている可能性があります。実際に、NYダウ平均株価やNASDAQなど米国株が上昇しても日経平均がついていけないという場面が増えています。

為替の影響を受けにくい新興株市場への注目度が高まる

 日本株は引き続き為替市場の動向に注意が必要となりますが、しばらくは為替の影響を受けにくいとされる新興株市場への注目度が高まると思われます。

■(図4)東証マザーズ指数(日足)の動き(2020年8月7日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 マザーズ指数は上値のブレイクラインを上抜けてきました。25日移動平均線も超えてきた他、今週は個人投資家からの人気の高い新興株市場銘柄の決算も多く予定されています。また、6月26日の直近高値(1,067p)をトライできるかも注目されます。

 したがって、今週の日経平均も上値が重たいながらも堅調さを維持していくというのがメインシナリオとなりますが、その堅調さの裏で着実に上値のエネルギーが弱まっており、本格的な上昇には新たな買い材料の登場が待たれるところです。