大阪金の誕生!売買戦略を立てる上での大きなヒント

 以下は、日経225mini先物と東京金ミニ先物(7月27日より大阪金ミニ先物)の値動きです。

図:日経225mini先物と東京金ミニ先物の値動き(15分足、終値) (2020年3月2日から7月17日まで)

出所:ブルームバーグより筆者作成

 今年(2020年)2月後半から3月中旬にかけておきた“新型コロナショック”の際、世界的に現金化の動きが強まったため、株も金(ゴールド)も売られました。しかし、その後、株と金が上昇し始めました。上図のとおり“株高・金高”が起き、現在もその傾向が続いています。

 この間の、2つの銘柄の相関係数は、強い連動性を示す“+0.82”です。相関係数は、+0.7を超えると連動性があると言われます(+1は全く同一の動き)。

 株高・金高が起きる仕組みは、いくつかあります。1つは、欧米での大規模な金融緩和です。以下のとおり、欧米での大規模な金融緩和は、株と金それぞれに、別々の意味で上昇要因として作用します。

図:株高・金高の一因“欧米の金融緩和”(イメージ)

出所:筆者作成

 欧米の大規模な金融緩和は、景気回復期待を増幅させ、株式市場に上昇要因として、そして同時に、欧米の通貨の価値の希薄化懸念をもたらし、金市場に上昇要因として、作用します。この結果、株高・金高が起きます。この事象は、2009~2012年、リーマン・ショックから経済を回復させるために行われた、欧米の大規模な金融緩和の際にも見られました。

 また、株高・金高の理由をもう一つ挙げるとすれば、“実態がない可能性がある株高への不安”が挙げられます。

 新型コロナショック後の世界的な株高は、実態を伴っていない可能性があると、さまざまな機関から疑問を呈す声が聞かれます。このような声が、不安心理(広く言えば“有事のムード”)を拡大させ、資金の逃避先として金(ゴールド)が物色されるきっかけになります。

 また、例えば、株価指数の堅調さを支える米国のハイテク企業において、業績見通しの大幅な下方修正が行われたりすると、株式市場全体が不安定化することがあります。しばしば見られる“アップル・ショック”などがその例です。

 株価の反発に実態が伴っていない可能性があったり、上記のようなショックに絶えず警戒しなくてはならなかったりすると、これらがきっかけで生まれる不安や、懸念、警戒感が、資金の逃避先として、金(ゴールド)を物色する動機になります。これもまた、株高・金高の理由になり得ます。

 大阪金がコロナ環境下でのスタートとなったことは、売買戦略を立てる上での大きなヒントと言えます。欧米での大規模な金融緩和や、実態がない可能性がある株高への警戒感が続く限り、今後も“株高・金高”も続く、と考えるべきだと、筆者は思います。

 従来の金市場にあった、材料を点でみる、例えば、有事のムードだけ、株との逆相関だけ、ドルとの逆相関だけなど、何か1つの材料だけに注目して金相場の動向を考えようとする見方は、特に“コロナ禍”では通用しないことに、注意が必要です。