私の35年の市場経験の中で最悪の信用市場の混乱(債券王ガンドラック)

 この相場はしばらくは底割れしないだろう。FRBをはじめとする世界の中央銀行が異常な速度で輪転機を回しているからだ。中央銀行は経済的・金融的安定を築こうとしていると世間的にはみなされている。しかしながら、実際には、巨大なバランスシートと市場介入によって、金融市場にとてつもない不安定性と不透明性を築こうとしている。げに恐ろしき道化師(ピエロ)は中央銀行家なり…。FRBの問題は、道しるべばかりで目標がないことだ。

2020年末までに連邦債務はほぼ確実に28兆ドルを超える

出所:ゼロヘッジ

 債券王ジェフリー・ガンドラックはヤフーファイナンスのインタビューに答え、FRBが異常な措置を通じていかに経済を支えているか、またそれによって市場のシグナルを歪めているかを指摘した。ガンドラックは、「FRBが企業の社債市場を支援することはその使命に違反している。私の35年の市場経験の中で、信用市場の混乱は10年前の金融危機よりはるかに悪い」と述べている。

 ゼロヘッジの記事「"There's No Price-Discovery Mechanism" - Gundlach Warns Fed "Desperation" Has Removed All Signals From Markets(「価格発見メカニズムはない」 - ガンドラック氏、FRBの「自暴自棄」が市場からすべてのシグナルを消し去ったと警告)」から一部を引用してご紹介しよう。

 ガンドラックはFRBの「最も驚異的な財政融資」は、2007~2008年の金融危機にまで遡っても、政策立案者がこれまでに展開してきた最大規模のものだと語り、パンデミックが始まって以来、中央銀行は経済の更なる暴落を防ぐために、社債を購入することで何兆ドルものドルを刷ってきた。その過程で、FRBのバランスシートは7兆ドルという驚異的な規模に膨れ上がった。

過去半年間の連銀のバランスシートの変化

出所:ダブルラインキャピタル

 FRBは「前代未聞の紙幣の増刷を使い、ありとあらゆる手段を駆使して市場と経済のボラティリティを下げることを決定した」とガンドラック氏は指摘、複数の資産クラスにまたがるボラティリティを抑制するために、市場に「何かを投げかけ続ける」ことに意欲を燃やしていると述べた。

 FRBのお札の印刷は「避けられないことを先延ばしにしている」と述べ、その間、彼らは至る所にお金を撒き散らして資産を買いまくっているので、先延ばしを続けられるだけの資力を持っている。ガンドラックは、「社債の価格は本当の意味で現実のものではない。ペッグされている価格発見のメカニズムがない。メッセージがあるわけではなく、FRBが行ってきた目標価格があるだけで、それが社債の急上昇につながった。FRBは絶望的な時には絶望的な措置が必要だと考え、社債を買いに行った」と指摘した。

 ウォール街からは個人投資家のスクランブル発進に危うさを指摘する声も出ている。ある運用者は「個別の企業、投資戦略などに知識のない投資家が多く飛び付くと、不幸な投資家がたくさん生まれる可能性がある。一握りのストーリー株を追いかけて火傷を負った個人投資家の長い歴史がある」とコメントしている。

 FRBによる安易な資金政策は単に危機を先送りしているだけに過ぎない。金融緩和によってウイルスの感染拡大を止めることはできないのである。企業の破たんも増えており、失業者の数も高止まりしている。今後、企業業績に急ブレーキがかかっていることが実際に確認されると、実態と大きくかい離した株式市場は調整を余儀なくされることも頭に入れておきたい。