ドルはゴールドに対して2年間ずっと下落している

 FRB(米連邦準備制度理事会)のQEインフィニティ(無限大量的緩和)でゴールドは3月に1,450ドルまで急落したが、現在は1,800ドルを越えて推移している。ゴールドの買いは富裕層のインフレヘッジだ。マーク・ファーバーは、「超低金利と膨れ上がる中銀資産には大変な副作用がある。政府に際限なくおカネを使わせてしまうことだ。これこそまさにMMT(現代貨幣理論)派の要求していることのようにみえる。」と述べているが、QEインフィニティでいずれ米連銀はにっちもさっちもいかなくなり破綻する可能性がある。

 一方で、QEやMMTは続けていてもなんの問題も起こらないというのが、MMTを支持する人たちの主張である。ゼロ金利で国債を大量発行しても政府の負担はないし、国の信用は失墜しない。長期金利上昇はYCC(イールドカーブコントロール)、ゴールドの上昇はゴールドの先物売りを中央銀行がやることで、通貨の信認は維持できる。特に米ドルは基軸通貨であり、その代替通貨がないので安全であると…。これが本当なら、ゴールドは暴落するだろう。

 しかしながら、ドルはゴールドに対して2年間ずっと下落している。また、基軸通貨に永続性などはないことは歴史が証明している。加えて、グローバリゼーションの崩壊でトランプが登場し、世界的にドル離れが進んでいる。また、COVID-19の景気悪化の悪影響を一番受けているのは米国である。米ドルの代わりに買う基軸通貨がないので、とりあえずゴールドが買われているのが現状だ。

ゴールド先物(日足)

出所:カスタムチャート・石原順インディケーター

ゴールドに対しドルは売られている

出所:ゼロヘッジ

中央銀行の準備金に占める米ドルの割合(%)

出所:ゼロヘッジ

世界の基軸通貨の変遷

出所:ゼロヘッジ

 世界最大のヘッジファンドを率いるレイ・ダリオは、リンクトインに発表した「Paradigm Shift(パラダイムシフト)」の中で、「ほとんどの人は現在のリスクある投資で株式、レバレッジド・プライベート・エクイティファンド、ベンチャーキャピタルなどへの投資を考えていると思うが、私はこれらが実質的に良いリターンをもたらす投資となる可能性は低いと思う。バランスの良いポートフォリオを持つためにゴールドを追加することは、リスク軽減と収益向上の両方につながるだろう」と述べた。筆者も同感である。

「信用拡大でもたらされた好景気は、結局のところ崩壊するのを避ける手段がない。残された選択肢は、さらなる信用拡大を自ら断念した結果、すぐに訪れる危機か、ツケを積み上げた結果、いずれ訪れる通貨制度を巻き込んだ大惨事かだけである」(ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス)