その4、「ベンチマーク」と「インデックス」

 ベンチマークは、運用の委託者とファンドマネージャーとの間で合意された「具体的なポートフォリオ」であることが必要だ。現実には、何らかのインデックス(指数)として発表されているものの計算の元になるポートフォリオがベンチマークとされることが多い。具体的には、日本株のTOPIX、米国株のS&P500などだ。

 このため、ベンチマークはインデックス(指数)でなければならないと思ったり、両者を同一視したりしている人が少なくない。

 しかし、先に紹介した「カスタマイズド・ベンチマーク」で分かるように、ベンチマークは商用の指数である必要はない。

 過去にさかのぼって銘柄・ウェイトを決めることができて、正確なリターン・データを利用できて、そのポートフォリオが今後の運用の目的に沿っているのなら、インデックス・ベンダーが発表するインデックスがベンチマークである必要はない。

 細かい話だが、S&P500や日経平均株価のような指数は、これを機関投資家が利用しようとした場合に、指数の計算者が利用料を要求することが多く、インデックス・ファンドの運用の場合などに、運用会社はコスト負担が必要なので(例えば、運用残高の0.02%程度の費用を請求される場合がある)、運用パフォーマンスにとってもマイナスになる。

 インデックスには、(1)市場の状況を把握するための統計データの元(2)インデックス・ファンドのターゲットやアクティブ運用の比較対象としての運用ポートフォリオの基準(3)先物・オプションなどの原資産、といった複数の役割があり、特に(1)と(3)は、運用のベンチマークとしての望ましさ(「規範性」)と矛盾する場合がある。

 例えば、インデックスの銘柄入れ替えやウェイトの変更が市場で利用(悪用)されることで、インデックス・ポートフォリオのリターンが損なわれる現象が時々起こるが、こうした属性は運用のベンチマークとしては好ましくない。

 インデックス運用は決して理想の運用ではなく、複数の欠点を持っている。現実には、ファンド内の取引コストの大きさ、手数料の高さなどの要因によって、「アクティブ運用が相対的に悪すぎる」ことが、多くの投資家がインデックス運用を選択すべき原因であるにすぎない。