その3、「ベンチマークの三条件」

 前記の三機能をよく果たすために、ベンチマークは以下の三つの条件を満たすことが望ましい。

第一の条件「透明性」

 ベンチマークは、その構成銘柄とウェイトがファンドマネージャーから見て把握可能でなければならない。そして、あるとすればそれらの変化の条件が事前に明らかで予測可能なものでなければならない。

 債券などのベンチマークに使われるインデックスにあっては、その構成銘柄やウェイトがオープンにされていないものもある。時には、インデックスのプロバイダーが、構成銘柄の情報を有料で教えるビジネスを営むようなケースもあり、こうしたインデックスの性質は、ベンチマークとするには望ましいものではない。

第二の条件 ベンチマークのリターンの「再現性」

 ベンチマークは、「特段の情報や判断がなければ、そのリターンを実現すべきもの」なので、そのリターンが再現できるようなものでなければならない。

 例えば、毎日の売買代金上位50%の銘柄で構成される株式のベンチマークを考えると、ベンチマークの銘柄とウェイトを知るタイミングに遅れが生じるのでファンドマネージャーがベンチマークと同じポートフォリオを持つことが難しい。加えて、ベンチマークの銘柄は相当の回転率で入れ替わることが予想され、売買コストによって運用パフォーマンスは大きく損なわれるだろう。このポートフォリオはベンチマークとして有効に機能しない。

第三の条件「規範性」

 何度も言うように、ベンチマークは「特段の情報や判断がなければ、そのリターンを実現すべきもの」なので、それ自体が運用されるポートフォリオとしてできるだけ望ましいものであるべきだ。

 例えば、米国株で言うと、通称「ニューヨーク・ダウ」として有名なダウ工業株30種平均よりも、S&P500の方が、リスク分散の効いたポートフォリオなのでベンチマークとして使う上で一般的にはより好ましい。