毎週金曜日夕方掲載

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1.新型コロナウイルス感染症の現在

 今回は、新型コロナウイルス感染症が広まった中でのゲーム・エンタテインメントセクターの動き、特に日本の動きを概観し、今後を展望したいと思います。

 まず、新型コロナウイルス感染症の現状を確認したいと思います。グラフ1は厚生労働省による新型コロナウイルスに関する相談電話の件数を記録したものです。日本政府が公式に新型コロナウイルス感染症の患者を日本国内で確認したのは2020年1月15日です。そして、2月中旬になってから相談電話が増え始めましたが、症状が出ていないのに電話する人は多くはないと思われるため、新型コロナウイルス感染症の症状が出始めた人がこの時期から増え始めたと思われます。

 ところが、グラフ2を見てわかる通り、PCR検査が増え始めたのは、3月中旬からです。PCR検査をしなければ感染者かどうかはわかりません。従って、PCR検査数の少なかった2月から3月上旬までの間は、グラフ3のように感染者数が少ないことになっているのです。

 しかし、相談電話の件数から見える実態は、2月中旬から3月中旬までの間、日本でおそらく第1波があったということです。この第1波は、北海道、大阪府、愛知県のように希望者に対してPCR検査を十分に提供していた自治体では確認できます(NHKの新型コロナウイルス特設サイトで都道府県別の時系列グラフを確認できます)。これらの自治体以上に日常的に中国と交流がある東京都と東京都の影響を強く受ける日本全体で(累計感染者数の約3分の1が東京都です)、2月から3月中旬にかけて実際に感染者が少なかったというのは論理的に考えにくいことです。

 最近になって明らかになってきた「超過死亡」(例年以上の死亡者数)の数を見ると、2月は統計上の異常はありませんでしたが、3月、4月は、例年よりも多くの死亡者がありました。3月の超過死亡者の中には、2月に明らかに症状が出ているにも関わらず、PCR検査を拒否されて適切な治療を受けられずに亡くなった方がいるかもしれません。

 ただし、この隠された第1波が実際にあったとしても、日本人に対しては軽いものだったと言えます。ちなみに、このウイルスは武漢から来たものであり、武漢で4,000人近く殺しています。

 3月下旬からは、日本で形式的には第1波(私が考えるに実質的な第2波)が始まりました。これは欧州から持ち込まれた強毒性のウイルスが流行したものであり、全世界で大きな被害をもたらしています。日本での被害は厚生労働省の発表によれば、諸外国に比べて大きくはありません。しかし、最近の報道では4月の超過死亡が多いため、厚生労働省の発表以上に死亡者が出ている可能性があります。

グラフ1 新型コロナウイルスに係る厚生労働省コールセンターの対応状況(相談件数)

単位:件
出所:厚生労働省資料より楽天証券作成

グラフ2 国内における新型コロナウイルスに係るPCR検査の実施状況

単位:件、
出所:厚生労働省より楽天証券作成、その他は民間検査会社、大学、医療機関等、2020年2月18日以降、結果判明日ベース

グラフ3 新型コロナウイルス感染症の感染者数と死亡者数(日本)

単位:人
出所:厚生労働省より楽天証券作成

2.警戒すべきなのは第2波だけではない

 新型コロナウイルス感染症の感染者が目立ち始めた時期に、厚生労働省は全国の保健所に対してPCR検査を特に重篤な患者に対してのみ行うように指示したと言われています。特に東京都において検査拒否が目立っていたと言われています。この背景には、PCR検査体制が十分ではなかったという事情のほかに、厚生労働省の関係者の中にワクチンの利権を独占するために、データを独占したいという思惑があったと言われています。また、とりわけ東京都においては、東京オリンピック・パラリンピックを開催するか中止するかの意思決定を行う前に、中止に結びつくような不利なデータを出したくないという意図があったとも言われています。

 実際のところがどうなのかはわかりません。ただし、PCR検査の数が日本は不足しているため、新型コロナウイルス感染症の実態解明が日本は遅れており、それがワクチン開発でも遅れを取っている原因になっている可能性があります。

 また、オリンピック開催のためにPCR検査を制限したというのが本当なら、このことは来年のオリンピック開催に向けて、厚生労働省、日本政府、東京都の各々が国民に対してリスキーな行動をとりかねないのではないかという懸念を生じさせます。

 欧米では感染第2波の到来が懸念されています。おそらく実際に第2波が到来すると考えていたほうがよいと思われます。日本でもその可能性があります。実際のところ、治療薬が見つかって治療法が確立したわけでもなく、ワクチンが完成したわけでもないため、問題は解決していません。もし(形式的な)第1波での死者が厚生労働省の発表よりも大幅に多いのであれば、第2波に対しては日本でも適切な防衛策をとる必要がありそうです。

3.ワクチン開発プロジェクトは数多いが…

 世界的に新型コロナウイルス感染症が拡大しているため、ワクチン開発も活発です。しかし、明らかに急造りと思われる開発プロジェクトもあります。

 アストラゼネカと英オックスフォード大学との共同開発プロジェクトは、すでに臨床試験フェーズⅠを終え、フェーズⅡ/Ⅲに入っています。今年の秋には実際に投与を始めるもようです。このワクチンは感染ブームのピークをやわらげるためのものであり、完全に感染を防ぐものではないようですが期待されています。ただし、短期間で臨床試験を終えるため、臨床試験をしっかり行ったワクチンに比べ副作用のリスクは高いかもしれません(普通は新薬の臨床試験は最短でも3~5年かかります。ワクチンは数百万人から数千万人、場合によっては数億人に投与するため、本来であれば臨床試験には時間がかかるはずです)。

 また、アメリカのモデルナが開発中のワクチンは、7月からフェーズⅡからフェーズⅢへ移行する模様です。

 欧米は感染拡大が止まらない切羽詰まった状態にあるため、このような急づくりのワクチンを実際に投与すると思われます。日本も政府が今年末をめどにワクチンを調達するもようですが、日本の現状を見ると、厚生労働省の報告ほど被害は軽くないようですが、欧米ほど切羽詰まった状態ではありません。ただし、オリンピックを開催するために、日本政府が国民に対して急づくりのワクチンを薦めるというリスクのある行動を起こすかもしれません。

 結局、日本企業と日本国民に求められるのは「自衛」でしょう。日本人にとっては、新型コロナウイルスは、仕事も遊びもオンラインで出来ることは全てオンラインで行って、マスクをつけて、ソーシャルディスタンスを守れば相当程度感染を防ぐことが出来るということが、3月下旬から5月中旬までの総自粛の中で、一応ですが実証されています。

 安全で効果の高いワクチンが開発されるまで、3~5年以上かかる可能性があります。その間は、巣ごもりを続けるしかないと思われますが、その過程で仕事と遊びの世界が大きく変わると思われます。

表1 新型コロナウイルス感染症の感染者数と死亡者数(2020年6月18日現在)

単位:人
出所:日本は厚生労働省と各自治体の調査をもとにNHK作成、世界はジョン・ホプキンス大学の調査をもとにNHK作成。