6.リアルエンタテインメント、制限付きながら再始動へ

 5月中旬からは映画館が段階的に再開されていますが、席と席の間に1席空けなければならないなど制約があります。上映されている映画も、席数が半分になる中で採算をとるためと思われますが旧作が多く、入場者数もまだ本格的な回復とは言えないと思われます。ただし、正常化に向けた1歩は踏み出しました。

 音楽ライブ、演劇も再開に向けて動き始めています。この分野で重要なのは、経済産業省が始めた音楽ライブ、演劇などに向けた補助金「J-LODlive」(ジェイロッドライブ)です。予算総額は約878億円で、今年2月以降中止、延期になった演目の主催者に対して、公演経費の半分まで最大5,000万円を補助するものです。無観客ライブも可能です。ただし条件があり、リアルでライブや演劇を行う場合は、席数を半分にするなどの感染対策が必要になります。

 この補助金を使って、6月25日(木)にアミューズ所属の「サザンオールスターズ」が横浜アリーナで無観客ライブ配信を行う予定です(主催はキョードー横浜、企画・制作はアミューズ)。チケット代は3,600円で、チケットの売れ行きが注目されています。横浜アリーナは音楽ライブの場合収容人数が約1万1,000人なので、チケットを購入する人がこれをどの程度上回るのか(5~10万人以上になるのか)が注目されます。

 舞台でも、3月下旬以降、演劇、ミュージカルの多くが公演中止、延期になりましたが、この補助金を使ったと思われる演目が7月から少数ですが上演されます。ただし、リアルの場合、席数が通常の半分になり、補助金だけで経費の全てを賄えるわけではないため、チケット代が上昇する場合があります。ある公演ではチケット代が新型コロナ前の最初の価格から約50%上昇して開催されます。観客がどの程度入るか、あるいは今後もリピート客が続くか注目されます。

 今のところ計画されている音楽ライブや舞台は、オンライン配信のみか、リアルの上演のみになります。両方を融合したものはまだ発表されていませんが、これは脚本や演出を変更する必要があるためと思われます。リアルと配信を融合させることが出来れば、補助金なしでも採算が確保できるようになる可能性があるため、このような動きが今後出てくるかどうか、注目したいと思います。

7.注目銘柄

東宝

 東宝は、映画製作と興行で日本最大手です。長きにわたって数多くのヒット作を生み出してきました。

 また、日本の3大演劇事業、宝塚歌劇団、劇団四季、東宝演劇のうち1つを持っています。日本の数多くの優良作品や、「エリザベート」「レ・ミセラブル」など海外作品の定期公演も行っています。セグメントの中では演劇部門は最も小さいですが、営業利益率20%以上の優良事業です。

 また、不動産部門が安定した高収益を上げていることも特色です。

 2020年2月期の業績は順調でした(営業収入2627億6600万円(前年比6.7%増)、営業利益528億5700万円(同17.5%増))。しかし、映画興行の中止、演劇の公演中止によって、今年2月以降業績が急低下しており、2021年2月期1Q(2020年3-5月期)は業績悪化が予想されます。会社側は2021年2月期予想業績を今のところ開示していません。

 今1Q決算が公表されれば、業績の方向性がある程度見えてくると思われます。足元では、映画部門で興行が再開され、新作上映も順次再開される方向にあります。更に、この秋から演劇が制限付きながら本格的に再開されると予想されます。

 そのため、今回は楽天証券の業績予想と目標株価を設定しない投資アイデアだけですが、中長期での投資妙味が出てきたと思われます。

アミューズ

 アミューズの2021年3月期は、売上高588億600万円(前年比6.6%増)、営業利益51億5,500万円(同15.1%増)となりました。前3Qまでは業績好調でしたが、2月以降、音楽ライブの中止、延期が相次いだため、前4Qから業績が悪化、営業赤字となりました。

 会社側は2021年3月期業績予想を開示していませんが、今1Q、今2Qは赤字が続く可能性があります。ただし、今下期になれば制限付きながら音楽ライブ(中小規模のものかオンライン配信)、演劇が本格的に再開されると思われるため、黒字転換も視野に入ってくると思われます。5月からは、CM撮影とドラマ撮影が再開されつつあります。

 今回の楽天証券業績予想では、今期は営業利益ゼロ、来期に黒字転換と予想しました。今後6~12カ月間の目標株価は、2,900円としました。2022年3月期の楽天証券予想EPS 115.2円に業績回復への期待を織り込んだ想定PER25倍を当てはめました。投資妙味を感じます。

表2 アミューズの業績

株価 2,230円(2020/6/18)
発行済み株数 17,355千株
時価総額 38,702百万円(2020/6/18)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
注2:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

任天堂

 任天堂は、2021年3月期1Q決算が注目されます。「あつまれ どうぶつの森」と旧作ソフトの今期業績への貢献度合いが今1Qの結果によって見えやすくなると思われます。会社側がハードの増産についてどう考えているのかも重要なポイントです。

 現時点では楽天証券の2021年3月期、2022年3月期業績予想は修正しません。ただし、株価に勢いがあるため、今後6~12カ月間の目標株価を前回の54,000円から58,000円に引き上げます。楽天証券の2021年3月期予想EPS 2,585.5円に想定PER20~25倍を当てはめました。一定の投資妙味を感じます。

表3 任天堂の業績

株価 50,110円(2020/6/18)
発行済み株数 119,124千株
時価総額 5,969,304百万円(2020/6/18)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
注2:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

ソニー

 2020年6月12日(金、日本時間)の早朝、ソニーはプレイステーション5に関する追加情報を公表しました。ハードウェア本体とコントローラの写真が初めて公開されました。数多くのPS5用ソフトのタイトル名と映像も公開されました。

 PS5用ソフトの中でソニー製(ソニー・インタラクティブ・エンタテインメントのスタジオとファーストパーティ(親密ソフト会社)で開発されているソフト)は、「マーベルズ・スパイダーマン」「グランツーリスモ7」を含む9作、サードパーティ製ソフトでは、「グランドセフトオートⅤ」(ロックスターゲームズ)、「バイオハザード ヴィレッジ」「プラグマタ」 (カプコン)、「プロジェクト アーシア(仮題)」(スクウェア・エニックス・ホールディングス/ルミナスプロダクションズ)を含む19作が公開されました。

 この中で目玉は、ソニー製「マーベルズ・スパイダーマン」で2020年ホリデーシーズン(11月第4木曜日からクリスマスイブまで)発売です。また、PS5用「グランドセフトオート」が2021年後半に発売予定となっています。

 なお、価格は公表されませんでした。発売日は従来通り、2020年ホリデーシーズンです。

 前回レポートでは、私はソニーのゲーム事業とともに、テレビ、カメラ、イメージセンサー、生保の新型コロナ禍の中での先行きを懸念したため、目標株価を7,000円としました。しかし、その後の株価の動きを見ると、株式市場はPS5発売を株価上昇の材料として評価していると思われます。私もPS5を過大評価はしていませんが過小評価もしておらず、PS4並には売れるハードになると考えています。

 そこで今回は考え方を変え、今後6~12カ月間の目標株価を8,500円としました。楽天証券の2022年3月期予想EPSにPS5への期待と他事業の業績回復期待を加味した想定PER20~25倍を当てはめました(楽天証券の業績予想は変更していません)。一定の投資妙味があると思われます。

表4 ソニーの業績

株価 7,665円(2020/6/18)
発行済み株数 1,220,160千株
時価総額 9,352,526百万円(2020/6/18)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は当社株主に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

カプコン

 ゲーム中級者、上級者の巣ごもり消費をある程度獲得しているもようで、2020年3月期4Qは旧作販売が急増しました。2021年にPS5版「バイオハザード ヴィレッジ(バイオハザード8)」を発売する予定です(楽天証券では2021年1-3月期と予想)。

 今後6~12カ月間の目標株価は4,900円を維持します。引き続き投資妙味を感じます(詳細は楽天証券投資WEEKLY2020年6月12日号を参照してください)。

表5 カプコンの業績

株価 3,885円(2020/6/18)
発行済み株数 106,751千株
時価総額 414,728百万円(2020/6/18)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

本レポートに掲載した銘柄:東宝(9602)アミューズ(4301)任天堂(7974)ソニー(6758)カプコン(9697)