毎週金曜日夕方掲載

本レポートに掲載した銘柄:東宝(9602)アミューズ(4301)任天堂(7974)ソニー(6758)カプコン(9697)

1.新型コロナウイルス感染症の現在

 今回は、新型コロナウイルス感染症が広まった中でのゲーム・エンタテインメントセクターの動き、特に日本の動きを概観し、今後を展望したいと思います。

 まず、新型コロナウイルス感染症の現状を確認したいと思います。グラフ1は厚生労働省による新型コロナウイルスに関する相談電話の件数を記録したものです。日本政府が公式に新型コロナウイルス感染症の患者を日本国内で確認したのは2020年1月15日です。そして、2月中旬になってから相談電話が増え始めましたが、症状が出ていないのに電話する人は多くはないと思われるため、新型コロナウイルス感染症の症状が出始めた人がこの時期から増え始めたと思われます。

 ところが、グラフ2を見てわかる通り、PCR検査が増え始めたのは、3月中旬からです。PCR検査をしなければ感染者かどうかはわかりません。従って、PCR検査数の少なかった2月から3月上旬までの間は、グラフ3のように感染者数が少ないことになっているのです。

 しかし、相談電話の件数から見える実態は、2月中旬から3月中旬までの間、日本でおそらく第1波があったということです。この第1波は、北海道、大阪府、愛知県のように希望者に対してPCR検査を十分に提供していた自治体では確認できます(NHKの新型コロナウイルス特設サイトで都道府県別の時系列グラフを確認できます)。これらの自治体以上に日常的に中国と交流がある東京都と東京都の影響を強く受ける日本全体で(累計感染者数の約3分の1が東京都です)、2月から3月中旬にかけて実際に感染者が少なかったというのは論理的に考えにくいことです。

 最近になって明らかになってきた「超過死亡」(例年以上の死亡者数)の数を見ると、2月は統計上の異常はありませんでしたが、3月、4月は、例年よりも多くの死亡者がありました。3月の超過死亡者の中には、2月に明らかに症状が出ているにも関わらず、PCR検査を拒否されて適切な治療を受けられずに亡くなった方がいるかもしれません。

 ただし、この隠された第1波が実際にあったとしても、日本人に対しては軽いものだったと言えます。ちなみに、このウイルスは武漢から来たものであり、武漢で4,000人近く殺しています。

 3月下旬からは、日本で形式的には第1波(私が考えるに実質的な第2波)が始まりました。これは欧州から持ち込まれた強毒性のウイルスが流行したものであり、全世界で大きな被害をもたらしています。日本での被害は厚生労働省の発表によれば、諸外国に比べて大きくはありません。しかし、最近の報道では4月の超過死亡が多いため、厚生労働省の発表以上に死亡者が出ている可能性があります。

グラフ1 新型コロナウイルスに係る厚生労働省コールセンターの対応状況(相談件数)

単位:件
出所:厚生労働省資料より楽天証券作成

グラフ2 国内における新型コロナウイルスに係るPCR検査の実施状況

単位:件、
出所:厚生労働省より楽天証券作成、その他は民間検査会社、大学、医療機関等、2020年2月18日以降、結果判明日ベース

グラフ3 新型コロナウイルス感染症の感染者数と死亡者数(日本)

単位:人
出所:厚生労働省より楽天証券作成

2.警戒すべきなのは第2波だけではない

 新型コロナウイルス感染症の感染者が目立ち始めた時期に、厚生労働省は全国の保健所に対してPCR検査を特に重篤な患者に対してのみ行うように指示したと言われています。特に東京都において検査拒否が目立っていたと言われています。この背景には、PCR検査体制が十分ではなかったという事情のほかに、厚生労働省の関係者の中にワクチンの利権を独占するために、データを独占したいという思惑があったと言われています。また、とりわけ東京都においては、東京オリンピック・パラリンピックを開催するか中止するかの意思決定を行う前に、中止に結びつくような不利なデータを出したくないという意図があったとも言われています。

 実際のところがどうなのかはわかりません。ただし、PCR検査の数が日本は不足しているため、新型コロナウイルス感染症の実態解明が日本は遅れており、それがワクチン開発でも遅れを取っている原因になっている可能性があります。

 また、オリンピック開催のためにPCR検査を制限したというのが本当なら、このことは来年のオリンピック開催に向けて、厚生労働省、日本政府、東京都の各々が国民に対してリスキーな行動をとりかねないのではないかという懸念を生じさせます。

 欧米では感染第2波の到来が懸念されています。おそらく実際に第2波が到来すると考えていたほうがよいと思われます。日本でもその可能性があります。実際のところ、治療薬が見つかって治療法が確立したわけでもなく、ワクチンが完成したわけでもないため、問題は解決していません。もし(形式的な)第1波での死者が厚生労働省の発表よりも大幅に多いのであれば、第2波に対しては日本でも適切な防衛策をとる必要がありそうです。

3.ワクチン開発プロジェクトは数多いが…

 世界的に新型コロナウイルス感染症が拡大しているため、ワクチン開発も活発です。しかし、明らかに急造りと思われる開発プロジェクトもあります。

 アストラゼネカと英オックスフォード大学との共同開発プロジェクトは、すでに臨床試験フェーズⅠを終え、フェーズⅡ/Ⅲに入っています。今年の秋には実際に投与を始めるもようです。このワクチンは感染ブームのピークをやわらげるためのものであり、完全に感染を防ぐものではないようですが期待されています。ただし、短期間で臨床試験を終えるため、臨床試験をしっかり行ったワクチンに比べ副作用のリスクは高いかもしれません(普通は新薬の臨床試験は最短でも3~5年かかります。ワクチンは数百万人から数千万人、場合によっては数億人に投与するため、本来であれば臨床試験には時間がかかるはずです)。

 また、アメリカのモデルナが開発中のワクチンは、7月からフェーズⅡからフェーズⅢへ移行する模様です。

 欧米は感染拡大が止まらない切羽詰まった状態にあるため、このような急づくりのワクチンを実際に投与すると思われます。日本も政府が今年末をめどにワクチンを調達するもようですが、日本の現状を見ると、厚生労働省の報告ほど被害は軽くないようですが、欧米ほど切羽詰まった状態ではありません。ただし、オリンピックを開催するために、日本政府が国民に対して急づくりのワクチンを薦めるというリスクのある行動を起こすかもしれません。

 結局、日本企業と日本国民に求められるのは「自衛」でしょう。日本人にとっては、新型コロナウイルスは、仕事も遊びもオンラインで出来ることは全てオンラインで行って、マスクをつけて、ソーシャルディスタンスを守れば相当程度感染を防ぐことが出来るということが、3月下旬から5月中旬までの総自粛の中で、一応ですが実証されています。

 安全で効果の高いワクチンが開発されるまで、3~5年以上かかる可能性があります。その間は、巣ごもりを続けるしかないと思われますが、その過程で仕事と遊びの世界が大きく変わると思われます。

表1 新型コロナウイルス感染症の感染者数と死亡者数(2020年6月18日現在)

単位:人
出所:日本は厚生労働省と各自治体の調査をもとにNHK作成、世界はジョン・ホプキンス大学の調査をもとにNHK作成。

4.日本と世界のゲームとリアルエンタテインメントの現状

 ここからは、家庭用ゲームとエンタテインメントの(特に日本の)現状を見ていきます。

 グラフ4は、日本のライブエンタテインメントの年間売上高の推移を見たものです(音楽ライブ、演劇、ミュージカル、握手会などの合計。出所はコンサートプロモーターズ協会)。2006年の925億円から2019年の3,665億円まで13年間で4倍になりました(2019年は前年比6.3%増)。

 公演数、動員数も増加しています(グラフ5)。公演数は2006年1万3,837本から2019年3万1,889本へ2.3倍となり、動員数は同じく1,978万人から4,955万人に2.5倍となりました。

 ただし、2015年頃から、公演数、動員数の伸びが鈍化しています。これは会場不足によるものが大きいと思われます。ライブエンタテインメントの人気は衰えておらず、チケット代が上昇し続けています(グラフ6)。チケット平均価格(年間売上高÷動員数)は2006年4,675円から2019年7,397円に58%上昇しました。特に、人気のあるアーティスト、舞台、ミュージカルのチケット代が上昇しています。

 また、映画興行収入は2019年2,612億円(前年比17.4%増)、映画入場者数は1億9,491万人(同15.2%増)(出所は日本映画製作者連盟)、遊園地・テーマパークの売上高は、2019年7,184億円(前年比1.0%増)、入場者数7,946万人(同0.2%増)(出所は経済産業省特定サービス産業動態統計調査)となっています。テーマパークは収容人数に限界があるため売上高は伸びなくなっていますが、ライブエンタテインメントと映画興行収入は成長が続いています。

 日本のリアルエンタテインメント全体を考えると、年間売上高は約1兆3,000億円、おそらく日本で1億人以上の人が音楽ライブ、舞台演劇、映画館、テーマパークのユーザーであろうと思われます。

 この成長市場が新型コロナウイルス感染症の影響で、今年2月下旬から段階的に停止し、4月上旬から5月上旬まで、完全に営業停止となりました。

 海外でもライブエンタテインメントを含むリアルエンタテインメントの成長が続いています。グラフ7は世界最大手の音楽、演劇プロモーターであるライブネイションエンタテインメント(Live Nation Entertainment)の年間売上高の推移を見たものです。アメリカと欧州その他で活動している会社ですが、高成長していることがわかります。後述の家庭用ゲームの市場になっている国と地域(日米欧とオセアニア、香港、韓国、台湾など)に限ると、8億人以上がリアルエンタテインメントのユーザーと思われます。

グラフ4 日本のライブエンタテインメントの年間売上高

単位:百万円
出所:コンサートプロモータ―ズ協会資料より楽天証券作成
注:音楽ライブ、演劇、握手会などの合計

グラフ5 ライブの年間公演数と動員数

出所:コンサートプロモーターズ協会より楽天証券作成

グラフ6 日本のライブエンタテインメント:チケット平均価格

単位:円/枚
出所:コンサートプロモーターズ協会資料より楽天証券作成

グラフ7 ライブネイションエンタテインメントの売上高

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成

5.家庭用ゲーム会社は大きなビジネスチャンスに直面している

1)家庭用ゲーム市場とリアルエンタメ市場を比較する

 家庭用ゲーム市場は、日本でも海外でも大きな成長はありません。任天堂とソニーのゲーム・ネットワーク事業の業績は拡大していますが、ゲーム人口≒ハードウェア累計販売台数は、過去から見て大きく減っても増えてもいません。任天堂とソニー・ゲーム事業の業績拡大はハード1台当たりソフト本数やサービスの売上増加と、採算の良い大型ソフト、過去作品の増加によるものと思われます。

 日本の家庭用ゲーム市場の規模は、2019年で4,369億円(前年比0.6%増)と横ばいです(ファミ通調べ)。内訳は、ハード1,595億円(同6.2%減)、ソフト2,773億円(同5.0%増)。年間のハード販売台数は2019年実績で約590万台。ユーザー数は推定で約2,000万人の市場です。

 日米欧その他の地域では、推定ユーザー数約2億人、年間ハード販売台数は約4,000万台の市場です。

 家庭用ゲームの世界市場は、過去10年以上の間、ハードウェアの更新サイクルに沿った循環的な動きに止まり、実質的に大きく成長していないと考えられます。この理由は、スマホゲームにユーザーが移ったということ以外に、リアルエンタメが拡大している中で、家庭用ゲーム市場が中級から上級のユーザーが主流の市場になってしまったことによると思われます。つまるところ、リアルエンタメのほうが面白いので、よほどのゲーム好き以外はリアルエンタメに移ったと思われます。

 任天堂はゲーム人口の拡大路線を掲げており、実際にゲーム造りは初心者から上級者までが楽しめるものになっています(このようなゲーム造りが任天堂の大きな特色です)。しかし、後述するようにハードウェアの生産体制が柔軟性を欠き、初心者の新規需要をうまく獲得できていません。

 また、ソニーと有力サードパーティ(日本ではスクウェア・エニックス・ホールディングス、カプコンなど)は、初心者よりも中級以上のユーザーに焦点を当てたゲーム造りを行っています。そのほうが、ゲームソフトの販売本数を伸ばしやすく、また、予想しやすいためです。

グラフ8 任天堂のゲームサイクル:据置型ハードウェア

単位:万台
出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

グラフ9 任天堂のゲームサイクル:携帯型ハードウェア

単位:万台
出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

グラフ10 ソニーのゲームサイクル:プレイステーションの販売台数

単位:万台
出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

2)家庭用ゲーム各社にチャンス到来

 ところが、日本でも海外でも今年2月からリアルエンタメの各分野が相次いで営業を中止すると、家庭用ゲーム各社に大きなチャンスが訪れました。家に引き籠らなければならなくなった各国のリアルエンタメユーザーが、家庭用ゲームを求め始めたのです。従来からニンテンドースイッチやプレイステーション4のハードを持っている人は、新作、旧作問わずソフトをオンラインで購入するようになりました。そのため、ゲーム大手では2020年1-3月期にゲームソフトのダウンロード販売(特に旧作販売)が急増しています。

 また、ハードを持っていない人は一斉にハードを注文するようになりました。前述のように、日本では推定2,000万人の家庭用ゲームユーザーに対して、推定1億人以上のリアルエンタメユーザーがいます。家庭用ゲームの世界市場(日米欧とオセアニア、香港、韓国、台湾など)でも、家庭用ゲームユーザー約2億人に対して8億人以上のリアルエンタメユーザーがいると思われます(ただし日本でも海外でも重複があります)。日本の場合は、軽く見積もっても1,000万人から2,000万人程度が家庭用ゲームのハードを買いたいと考えている可能性があります(ゲームの初心者が多いと思われるため、対象はニンテンドースイッチが多いと思われます)。リアルエンタメは1回ごとにお金がかかるため、リアルエンタメのユーザーはゲームのハード、ソフトの購入資金も十分持っています。

 この大きな特需が各国で発生していると思われますが、この特需は期間限定です。リアルエンタメが徐々に再始動し始めています。私は新型コロナウイルスの影響は長期化する可能性がある(解決に3~5年以上かかる可能性がある)と考えていますが、来年中にはリアルエンタメの世界で新たな状況に対応する新しいビジネスモデルが確立される可能性があります。家庭用ゲームの各社がこの特需を獲得する機会は、この先も長く続くわけではないと思われます。

3)任天堂の最大の問題点は、ハードウェアの生産体制

 今のところ、任天堂もソニーもこの大きなチャンスを全て獲得しているわけではありません。

 任天堂のソフトラインナップには、大ヒットしている「あつまれ どうぶつの森」だけでなく、「マリオカート8デラックス」「Splatoon2」「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL」など初心者から上級者まで楽しめるソフトが数多くあります。

 ただし、ニンテンドースイッチのハードウェアが思うように生産できていません。中国、ベトナムの組立工場は稼働していますが、東南アジアで調達している一部の部品が足りていないもようです。この部品不足はPS4でもありますが、ニンテンドースイッチに対する需要が大きいと思われるため、任天堂にとってより大きな問題になっていると思われます。

 任天堂もソニーもゲームハードウェアを柔軟に増産できるようになっていません。11月末からクリスマスイブまでのホリデーシーズンに焦点を合わせて生産数量を調節しているのみで、今回のような突発的なハードの需要増加だけでなく、特定のソフトが大ヒットしたことによるハード需要の増加に対応することも、過去の事例をみるとうまくいっていません。ソフトでの新規ユーザーの開拓は大きな成果を挙げていますが、ハード政策が片手落ちになっていると思われます。

 ニンテンドースイッチの部品不足は夏場には解消する見込みですが、任天堂がハードの増産についてどう考えているのかが、今後の注目点になりそうです。

 家庭用ゲームにはリスクもあります。感染第2波が欧米を襲って、再び人々が巣ごもらなければならなくなった場合、今の状況を上回る不況になりかねません。特に心配なのは欧州です。その場合、巣ごもりは家庭用ゲーム需要にはプラスですが、不況ははっきりとマイナスになります。

6.リアルエンタテインメント、制限付きながら再始動へ

 5月中旬からは映画館が段階的に再開されていますが、席と席の間に1席空けなければならないなど制約があります。上映されている映画も、席数が半分になる中で採算をとるためと思われますが旧作が多く、入場者数もまだ本格的な回復とは言えないと思われます。ただし、正常化に向けた1歩は踏み出しました。

 音楽ライブ、演劇も再開に向けて動き始めています。この分野で重要なのは、経済産業省が始めた音楽ライブ、演劇などに向けた補助金「J-LODlive」(ジェイロッドライブ)です。予算総額は約878億円で、今年2月以降中止、延期になった演目の主催者に対して、公演経費の半分まで最大5,000万円を補助するものです。無観客ライブも可能です。ただし条件があり、リアルでライブや演劇を行う場合は、席数を半分にするなどの感染対策が必要になります。

 この補助金を使って、6月25日(木)にアミューズ所属の「サザンオールスターズ」が横浜アリーナで無観客ライブ配信を行う予定です(主催はキョードー横浜、企画・制作はアミューズ)。チケット代は3,600円で、チケットの売れ行きが注目されています。横浜アリーナは音楽ライブの場合収容人数が約1万1,000人なので、チケットを購入する人がこれをどの程度上回るのか(5~10万人以上になるのか)が注目されます。

 舞台でも、3月下旬以降、演劇、ミュージカルの多くが公演中止、延期になりましたが、この補助金を使ったと思われる演目が7月から少数ですが上演されます。ただし、リアルの場合、席数が通常の半分になり、補助金だけで経費の全てを賄えるわけではないため、チケット代が上昇する場合があります。ある公演ではチケット代が新型コロナ前の最初の価格から約50%上昇して開催されます。観客がどの程度入るか、あるいは今後もリピート客が続くか注目されます。

 今のところ計画されている音楽ライブや舞台は、オンライン配信のみか、リアルの上演のみになります。両方を融合したものはまだ発表されていませんが、これは脚本や演出を変更する必要があるためと思われます。リアルと配信を融合させることが出来れば、補助金なしでも採算が確保できるようになる可能性があるため、このような動きが今後出てくるかどうか、注目したいと思います。

7.注目銘柄

東宝

 東宝は、映画製作と興行で日本最大手です。長きにわたって数多くのヒット作を生み出してきました。

 また、日本の3大演劇事業、宝塚歌劇団、劇団四季、東宝演劇のうち1つを持っています。日本の数多くの優良作品や、「エリザベート」「レ・ミセラブル」など海外作品の定期公演も行っています。セグメントの中では演劇部門は最も小さいですが、営業利益率20%以上の優良事業です。

 また、不動産部門が安定した高収益を上げていることも特色です。

 2020年2月期の業績は順調でした(営業収入2627億6600万円(前年比6.7%増)、営業利益528億5700万円(同17.5%増))。しかし、映画興行の中止、演劇の公演中止によって、今年2月以降業績が急低下しており、2021年2月期1Q(2020年3-5月期)は業績悪化が予想されます。会社側は2021年2月期予想業績を今のところ開示していません。

 今1Q決算が公表されれば、業績の方向性がある程度見えてくると思われます。足元では、映画部門で興行が再開され、新作上映も順次再開される方向にあります。更に、この秋から演劇が制限付きながら本格的に再開されると予想されます。

 そのため、今回は楽天証券の業績予想と目標株価を設定しない投資アイデアだけですが、中長期での投資妙味が出てきたと思われます。

アミューズ

 アミューズの2021年3月期は、売上高588億600万円(前年比6.6%増)、営業利益51億5,500万円(同15.1%増)となりました。前3Qまでは業績好調でしたが、2月以降、音楽ライブの中止、延期が相次いだため、前4Qから業績が悪化、営業赤字となりました。

 会社側は2021年3月期業績予想を開示していませんが、今1Q、今2Qは赤字が続く可能性があります。ただし、今下期になれば制限付きながら音楽ライブ(中小規模のものかオンライン配信)、演劇が本格的に再開されると思われるため、黒字転換も視野に入ってくると思われます。5月からは、CM撮影とドラマ撮影が再開されつつあります。

 今回の楽天証券業績予想では、今期は営業利益ゼロ、来期に黒字転換と予想しました。今後6~12カ月間の目標株価は、2,900円としました。2022年3月期の楽天証券予想EPS 115.2円に業績回復への期待を織り込んだ想定PER25倍を当てはめました。投資妙味を感じます。

表2 アミューズの業績

株価 2,230円(2020/6/18)
発行済み株数 17,355千株
時価総額 38,702百万円(2020/6/18)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
注2:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

任天堂

 任天堂は、2021年3月期1Q決算が注目されます。「あつまれ どうぶつの森」と旧作ソフトの今期業績への貢献度合いが今1Qの結果によって見えやすくなると思われます。会社側がハードの増産についてどう考えているのかも重要なポイントです。

 現時点では楽天証券の2021年3月期、2022年3月期業績予想は修正しません。ただし、株価に勢いがあるため、今後6~12カ月間の目標株価を前回の54,000円から58,000円に引き上げます。楽天証券の2021年3月期予想EPS 2,585.5円に想定PER20~25倍を当てはめました。一定の投資妙味を感じます。

表3 任天堂の業績

株価 50,110円(2020/6/18)
発行済み株数 119,124千株
時価総額 5,969,304百万円(2020/6/18)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
注2:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

ソニー

 2020年6月12日(金、日本時間)の早朝、ソニーはプレイステーション5に関する追加情報を公表しました。ハードウェア本体とコントローラの写真が初めて公開されました。数多くのPS5用ソフトのタイトル名と映像も公開されました。

 PS5用ソフトの中でソニー製(ソニー・インタラクティブ・エンタテインメントのスタジオとファーストパーティ(親密ソフト会社)で開発されているソフト)は、「マーベルズ・スパイダーマン」「グランツーリスモ7」を含む9作、サードパーティ製ソフトでは、「グランドセフトオートⅤ」(ロックスターゲームズ)、「バイオハザード ヴィレッジ」「プラグマタ」 (カプコン)、「プロジェクト アーシア(仮題)」(スクウェア・エニックス・ホールディングス/ルミナスプロダクションズ)を含む19作が公開されました。

 この中で目玉は、ソニー製「マーベルズ・スパイダーマン」で2020年ホリデーシーズン(11月第4木曜日からクリスマスイブまで)発売です。また、PS5用「グランドセフトオート」が2021年後半に発売予定となっています。

 なお、価格は公表されませんでした。発売日は従来通り、2020年ホリデーシーズンです。

 前回レポートでは、私はソニーのゲーム事業とともに、テレビ、カメラ、イメージセンサー、生保の新型コロナ禍の中での先行きを懸念したため、目標株価を7,000円としました。しかし、その後の株価の動きを見ると、株式市場はPS5発売を株価上昇の材料として評価していると思われます。私もPS5を過大評価はしていませんが過小評価もしておらず、PS4並には売れるハードになると考えています。

 そこで今回は考え方を変え、今後6~12カ月間の目標株価を8,500円としました。楽天証券の2022年3月期予想EPSにPS5への期待と他事業の業績回復期待を加味した想定PER20~25倍を当てはめました(楽天証券の業績予想は変更していません)。一定の投資妙味があると思われます。

表4 ソニーの業績

株価 7,665円(2020/6/18)
発行済み株数 1,220,160千株
時価総額 9,352,526百万円(2020/6/18)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は当社株主に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

カプコン

 ゲーム中級者、上級者の巣ごもり消費をある程度獲得しているもようで、2020年3月期4Qは旧作販売が急増しました。2021年にPS5版「バイオハザード ヴィレッジ(バイオハザード8)」を発売する予定です(楽天証券では2021年1-3月期と予想)。

 今後6~12カ月間の目標株価は4,900円を維持します。引き続き投資妙味を感じます(詳細は楽天証券投資WEEKLY2020年6月12日号を参照してください)。

表5 カプコンの業績

株価 3,885円(2020/6/18)
発行済み株数 106,751千株
時価総額 414,728百万円(2020/6/18)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

本レポートに掲載した銘柄:東宝(9602)アミューズ(4301)任天堂(7974)ソニー(6758)カプコン(9697)