メルクの試みについて

 メルクは最後まで新型コロナウイルス向けワクチンの開発に関し、口を閉ざしてきた企業です。同社はワクチン開発の困難さをよく理解しており、しっかりした開発態勢が整うまで発表を控えてきたのです。

 しかし6月、満を持して新型コロナウイルスワクチン開発に乗り出すと発表。同社は非営利科学研究団体IAVIと組み、rVSV(遺伝子組み換え水疱性口内炎ウイルス)と呼ばれる技術を援用し、ワクチンを開発するといいます。rVSVはザイール・エボラ出血熱ワクチン「ERVBO」で使われた実績があります。

 加えて同社は、独自の免疫調節療法技術を持つテーミス・バイオサイエンスを買収すると発表しました。テーミスはオーストリアのウイーンに本社を置き、2020年3月にフランスのパスツール研究所、ピッツバーグ大学とコンソーシアムを組み、新型コロナウイルス向けワクチンの開発に乗り出したばかりです。このコンソーシアムはCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)から支援金を獲得しています。