ワクチン製造について

 ところで、ワクチンは臨床試験で効果が確認されただけでは、実用化までには不十分です。なぜなら大量生産が難しいからです。

 一般論としてmRNAのワクチンはそれ以外のワクチンより量産が簡単だと言われています。その意味ではモデルナ/ロンザ、ファイザー/バイオンテックが有利だと言えます。

 ジョンソン&ジョンソンは実際のワクチンの製造をエマージェントに任せます。

 そのエマージェントはBARDA(米生物医学先端研究開発局)から総額6.28億ドルの前渡金をもらいました。うち5.43億ドルは新型コロナウイルス向けワクチンのCDMO(受託開発製造下請け)業務に対する支払いで、残りの8,550万ドルはワクチン製造能力を増強するための予算です。

 同社はミシガン州保健局が所有していたワクチン工場の払い下げを受け、1998年に民間企業としてスタート。バイオテロ兵器として知られる炭疽(たんそ)菌攻撃に対抗するための炭疽菌ワクチン、天然痘ワクチン、腸チフスワクチン、コレラワクチン、さらにオピオイドを過剰摂取した救急患者に対するスプレー式解毒剤「ナルカン」を作っています。

 そして「ナルカン」に関しては同社のパテントに対し、テバ・ファーマシューティカルズ(TEVA)が「無効である!」と主張。先週、ニュージャージー州の地方裁判所がテバに有利な判決を下しました。そのため、エマージェントの株価は一時急落しています。しかしエマージェントはこの判決を不服とし控訴する考えです。