相場は行き過ぎだがさらに上昇も

 続いては過熱感です。

■(図5)日経平均(日足)と移動平均乖離率(2020年6月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 

 上の図5は日経平均の25日移動平均線を基準とした乖離(かいり)率の推移です。5日(金)時点の乖離率は9.44%で、株価が移動平均線から10%近く離れている状況です。

 チャートを過去にさかのぼってみても、10%以上乖離した場面は数える程度しかありませんので、相場は行き過ぎていると判断できます。

 そのため、「調整局面がやって来て大きく株価が下落する」と考えるのが普通ですが、過去において、乖離率が10%を超えた時の状況を見ると、その後も上昇基調が続くというパターンが多くなっています。

一般的に、トレンドは事態の急変がない限り、次第に勢いを失って天井や底を形成していきます。つまり、乖離率が大きくなるほどトレンドに勢いがある足元の状況からすれば、一気にトレンドが転換していくのではなく、相場の勢いと、先ほどの株価の水準感を見極めながら、次の方向性を探っていく様子見になっていくのかもしれません。

 確かに、過去において10%以上乖離したのは、2012年11月からのいわゆる「アベノミクス相場」の初期に集中しています。楽観的な見方をすれば、「現在はアベノミクス以来の大相場が訪れている」のかもしれません。

 ここ2週間の買いの勢いは、外国人の見直し買いや売り方の買い戻し、個人投資家の新規参入の買いなど、需給面による寄与度が大きいと言えますが、今週末のメジャーSQでひとまず需給のピークを迎えます。

 また、緊急事態宣言解除後の新型コロナウイルスの感染者の動向がそろそろ出始めるタイミングですし、感染者の動向次第では経済活動再開のペース鈍化と今後の対応への警戒が強まってきます。

 さらに、日本は政策対応の評判があまり良くないにも関わらず、コロナ感染者数と死者数については世界の中で成功している国として見られています。そのため、状況が困難な他国と比べて経済再開に向けて動き出したことを前向きに評価する動きが足元の株高につながっている面もありそうですが、いざ感染が再拡大した場合には、政策対応や準備に乏しいことがかえって売り材料として見なされてしまうかもしれません。

 したがって、足元の株価上昇が一服した後に下落基調に転じるのか、それとも再び上昇基調を描いていくのか、ここからが本当の「勝負どころ」になると思われます。