強弱ともに材料が存在するが、プラチナの最大の魅力は、リーマン・ショック後の安値に近いこと
最後に、プラチナ価格の長期のグラフ(年足)を確認します。2020年は3月の新型コロナ・ショックで一時的に、2008年のリーマン・ショック直後の安値を割り込みましたが、すぐに反発しました。引き続き、長期的な視点で、底堅い状況が継続していると、筆者はみています。
図:ドル建てプラチナ年足 単位:ドル/トロイオンス
本レポートで述べた上昇・下落の要因についてまとめます。
【上昇要因】
- 新型コロナウイルス感染拡大によって受けたダメージから、経済を回復させるために行われている欧米の大規模な金融緩和により、株高・金高が起きやすくなっており、プラチナも反発しやすくなっているとみられる。
- 主要鉱山生産国における新型コロナウイルスの感染拡大が、さらに進行した場合、プラチナの供給が減少する懸念がある。
- 自動車生産台数は近年、頭打ち感がある(今後、新型コロナの影響で大きく減少する可能性もある)が、自動車1台あたりに使われる排ガス浄化装置向けの貴金属の量は、増加している。排ガス規制の強化が、プラチナを含んだ排ガス浄化装置向け貴金属全体の消費量を一定程度保つ役割を果たしているとみられる。
- 新型コロナ・ショック時に、一時的にリーマン・ショック直後の安値を割ったものの、すぐに反発した。底堅い状況は、現在も継続しているとみられる。
【下落要因】
- リサイクルからの供給が増え、鉱山生産国以外からの輸出が拡大した場合、プラチナの需給バランスが緩む可能性がある。
今回はプラチナについて述べました。
プラチナは、金やパラジウムと比較されることがありますが(プラチナと金、プラチナとパラジウムの価格差など)、仮に、価格差の議論でプラチナが割安と判断されても、それはあくまでも相対比較に過ぎず、プラチナ単体を買う動機としては、決して強いものではないと筆者は思います。
それよりは、プラチナ単体の、需給や価格の水準に注目することが、プラチナ市場の状況を把握するために役立つと思います。