プラチナの輸出国上位に注意。主要鉱山国以外が複数。精錬・加工のための備蓄放出も?

 次に、プラチナの輸出国上位を確認します。

 以下の表中の「ネット輸出額」とは、同一国が、同一期間に同一品目の輸出と輸入を行った場合の、輸出額から輸入額を差し引いた値です。当該品目について正味、どれだけの額を輸出したのかを、示します。値がマイナスの場合は“ネット輸入”を意味します。

図:プラチナの輸出額(2019年) 単位:千米ドル

出所:ITC(国際貿易センター)のデータより筆者作成

 2019年のプラチナの輸出額No.1は、南アフリカでした。鉱山生産2位だったロシアは、輸出額では8位でした。また、ともに輸出率は95%を超えているため、南アフリカとロシアは、世界における、純粋なプラチナの供給者といえます。

 一方、輸出額2位は、英国でした。3位はドイツ、そして7位にベルギー、9位には日本が入りました。

 純粋な供給者以外(南アフリカとロシア以外)は、自国で鉱山生産は行っておらず、他国から輸入した加工前のプラチナや、自国でリサイクルされたプラチナを輸出しているとみられます。かつて、北米の鉱山から採取されたプラチナが、ベルギーに輸出されて盛んに精練されていた、英国がリサイクルされたプラチナの重要な集積地だった、と言われていることと、関りがありそうです。

 ネット(正味)輸出額で見れば、主要な鉱山生産国である南アフリカやロシアの存在感は大きいですが、実際の輸出額で見れば、主要な鉱山生産国よりも、鉱石を精錬したり保管をしたり、自動車の排ガス浄化装置や電子部品、宝飾品などを作ったり、これらの製品からリサイクルし得るプラチナを大量に保有したりしている国の方が、存在感が大きいことが分かります。

 2019年は、7位に入ったベルギーの輸出が目立ちました(輸出率80%)。今後も、ベルギーだけでなく、英国やドイツ、米国などの鉱山生産国以外が、輸出を拡大する可能性はゼロではないと思います。

 プラチナの供給と言えば、南アフリカとロシアとジンバブエですが、このような鉱山生産国以外からの、リサイクルなどをきっかけとした輸出増加の可能性がある点に注意が必要だと思います。